機上の九龍

The kowloon on an aeroplane

空論 テラフォーミング・マーズ(4)

現時点での『テラフォーミング・マーズ / Terraforming Mars』の見解を纏めておきます。

今回はボード以外の拡張の特徴について。

企業評価から先に書きたいのはやまやまなんですが、どの拡張を導入するかでかなり評価が上下するので、その辺りを押さえておかないと書きにくいなと。

テラフォーミング・マーズ拡張 ヴィーナス・ネクスト 完全日本語版

テラフォーミング・マーズ拡張 ヴィーナス・ネクスト 完全日本語版

 
テラフォーミング・マーズ拡張 プレリュード 完全日本語版

テラフォーミング・マーズ拡張 プレリュード 完全日本語版

 
テラフォーミング・マーズ拡張 コロニーズ 完全日本語版

テラフォーミング・マーズ拡張 コロニーズ 完全日本語版

 

拡張に関しては週2回程度を半年やってるんで概ね掴んでいるとは思います。この3つに関してはフォローしますが、プロモーションカードや『動乱 / TURMOIL』に関してはほぼ触れません。

また、基本的には非ドラフト前提で書いています。

 

参考文献・サイト・スレッド

テラフォーミングマーズ解体新書

 

Board Game: Terraforming Mars

ルールはBGGの該当スレッドを参考にしています。

https://ssimeonoff.github.io/cards-list

カードリストはこのページから主に出力しています。

 

空論 テラフォーミング・マーズ(5)

『プレリュード』『コロニーズ』のFAQです。

 

空論 テラフォーミング・マーズ(8)

【動乱 / Turmoil】のルールについて。

空論 テラフォーミング・マーズ(3)

基本ボードと『ヘラス&エリシウム』のボードについて書いています。

空論 テラフォーミング・マーズ(2)

基本セット段階での企業評価と、変換レートについて書いています。

空論 テラフォーミング・マーズ(1)

企業評価(所感)と、プレイ人数の多寡による影響について書いています。

1) ヴィーナス・ネクス

2) プレリュード

3) コロニーズ

1) ヴィーナス・ネクス

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a) 概要

新たに金星ボード、49枚のプロジェクトカード、5つの企業、称号・褒章が各1つ追加され、「地球政府の介入」(毎ラウンド終了時、いずれかのグローバルパラメーターが上昇する) ルールも追加されました。

終了フラグとは関わりのない得点源ができたため、ラウンドが最も長引く傾向にあります。それを緩和する為の「地球政府の介入」ルールなのでしょうが、それでも3人戦だと14~15ラウンド掛かることもあります。(基本的には11~13ラウンドくらい?)

金星8%にした時のボーナスは、レート的には3MCなので「踏めればラッキー」程度。16%の追加でTR+1効果は10MC相当なので出来れば踏みたいですが、12%から標準プロジェクト《金星大気の減圧 / Air Scrapping》を2回した場合は、レート的には3TR = 30MCとトントンにしかならず、旨味はありません。

 

追加されたプロジェクトカードは単純にコストパフォーマンスが悪いか、タグ条件があるか、追加効果を活かせなければ微妙なカードが多く、単独で有効なカードは少ない...平たく言えば弱いカードが多いです。

 

b) プロジェクトカード

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序盤で出せればそれなりに活躍するカード達。

《部分遮光 / LOCAL SHADING》は一見優秀見えますが、単独で使うと1ラウンド目に出したとしても黒字になるのが6ラウンド目の収入 (使えるのは7ラウンド目。以降もプロジェクトカードの費用対効果はキープ代3MC含む) と立ち上がりが遅く、黒字化が1ラウンド早い《スポンサー / SPONSORS》などに比べると見劣りします。それでも産出カードとしては使える部類です。

逆に《金星飛行船団 / DIRIGIBLES》は黒字化するのが5ラウンド目の収入前と、プレイ条件の無いカードの中で計算上は優秀な産出カードです...金星タグのカードにしか使えない点に目を瞑ればですけども。

重水素の輸出 / DEUTERIUM EXPORT》はレート的には4ラウンドだと《地熱発電 / GEOTHERMAL POWER》の実質下位互換、6ラウンドで《巨大宇宙鏡 / GIANT SPACE MIRROR》と同じ電力産出+3に達します。2ラウンドに1回電力産出を下げるカードがあるような場合には意外と重宝するものの、どちらかと言えば条件なしでタグが3つある事を活かしたいカードです。

《大気図作成者 / AERIAL MAPPERS》はレート換算だと6ラウンドで元が取れますが、自身に浮遊体を載せるとレート的には1.5MC。《部分遮光》は2.5MC、《金星飛行船団》は3MC、《重水素の輸出》は3.5MCなので、序盤はこれらのカードに載せて、後半《浮遊ハブ / FLOATING HABS》 (2.5MC) があればそちらに載せる方がレート的には効率が良いです。単独でドロー強化カードとして使うとかなり微妙。

《硫黄細菌 / SULPHUR-EATING BACTERIA》も換金を2ラウンド毎にすると3MCと、単独ではさほど強くはありません。微生物を4個消費すれば元が取れるので、それ以上は消費したいところ。

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《窒素の輸入 / IMPORTED NITROGEN》が実質9MCキャッシュバックになったりと微生物を載せるカードとのシナジーが高いものの、該当するカードは12枚しかなく (金星カードに資源を載せるカードを含めても14枚) 、後の引きに期待するのは望み薄。ただ、【エンケラドゥス / ENCELADUS】へのコロニー建設や交易で【月 / LUNA】と比べても遜色ないMCを産出するようになると一気にMC産出カードとして輝きます。このカードと《金星昆虫 / VENUSIAN INSECTS》《低温菌 / PSYCHROPHILES》が割と使えるため、《蟻 / ANTS》をちょくちょく見かけるようになりました。

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早めに出せれば強いカード達。

《対腐蝕服 / CORRODER SUITS》は基本的には2MC重い《スポンサー》で、《部分遮光》などを出してたらラッキーくらいに思った方が良いです。「《成層圏の鳥 / Stratospheric Birds》に載せれば1点追加だ」と温存するプレイヤーを見かけますが、レート的には2ラウンド待機までならアリ。

他のカードは《スポンサー》等に比べてコストこそ下がってますが、条件クリアするまでに時間が掛かるとそれだけ産出する機会が失われます。見込みが無ければキープしない勇気が必要です。もちろん早期に出せればかなり優秀なカードとなります。

 

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金星評価を上昇させるカード達。

19/49枚 (38.8%) と無駄に多いです。金星カードにありがちな追加効果を活用するか、金星評価8%の1ドローや16%の+1TRを踏めればコスト以上の効果を得られますが、概ね使い勝手は悪いです。このカテゴリーの多さが金星カードの使い勝手の悪さを助長しているとさえ思えます。

《金星植物 / VENUSIAN PLANTS》は金星評価ボーナスこそ通常は得られませんが、単独でも1VP+1TR と採算ラインにギリギリ乗らないくらいには強いです。

一番使い勝手が良いのはシンプルな《金星への水 / WATER TO VENUS》《中和剤工場 / NEUTRALIZER FACTORY》かもしれません。(ほとんど使った事ありませんが)

 

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回れば強いカード達。

《回転都市(ジャイロポリス) / GYROPOLIS》は早ければ早いほど良いMC産出と、遅ければ遅いほど強力になる参照効果を持つ、矛盾含みのカード。金星の都市カードで唯一予定地を持たない上に強力なMC産出効果を持つので、盤面に都市を配置し忘れることも。効果を最大限引き出すよりは5~6ラウンド目に出した方が基本的には良い働きをしますが、【銀行王 / Banker】目的で出されることも。《ロボット作業員 / ROBOTIC WORKFORCE》でコピー、というロマンもありますが、普通の電力産出-1の都市カードよりMC産出効率が落ちることも多く、使い勝手自体は悪いです。

フレイヤ環境ドーム / FREYJA BIODOMES》《マックスウェル基地 / MAXWELL BASE》は後述の動物2匹がいると輝きますが、無くても採算ラインにギリギリ届かないくらいには強いです。

《支援を受けた学会 / SPONSORED ACADEMIES》は致命的なカードを引かれる恐れはあるものの、それなりの低コストにVPが付いてタグも優秀と、このカードを捨てる状況はほぼありません。総合的に見れば『ヴィーナス・ネクスト』で最も強いカードと言えるでしょう。

その他のドロー強化カードも使用条件さえ整えれば優秀。序盤に必要となる産出カードにタグ条件が付くと使い勝手が悪くなりますが、主に中盤から使いはじめるドロー強化カードにとってはそこまで高いハードルとはなりません...《イオ硫黄研究 / IO SULPHUR RESEARCH》の3ドロー条件を除けば。

 

金星拡張の中で最も得点力の高いカードは《成層圏の鳥》という意見もあるでしょうけど、

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個人的には《金星動物 / Venusian Animals》を推します。安定はしませんが爆発力は《テラフォーミング・ガニメデ / TERRAFORMING GANYMEDE》も凌ぎます。先出し / 後出し や素点の違いはあれど、木星タグ21枚、科学タグ47枚と、影響範囲の広さは段違いです。

 

c) 称号

※追記

あくまでこの記事を書く段階での考察です。

データを元にした考察は以下で触れています。

空論 テラフォーミング・マーズ(6)

基本セット12企業の拡張【コロニーズ / Colonies】までのデータ

空論 テラフォーミング・マーズ(7)

拡張【コロニーズ / Colonies】までの企業のデータ

 

【滞空卿 / HOVERLORD】 カード上に7個以上の浮遊体

序盤に使いたいカードは浮遊体を消費するカードが多く、消費しないカードは後半使いたい得点カードが多いため、単純に浮遊体カードがあれば良いわけでもない点が難しいです。基本的に獲得を目指すなら浮遊体を貯めておき、称号を取ってから消費する動きになり易く、ただでさえ挙動が遅い浮遊体カードの欠点を増幅させることになります。(それでもやるんですが)

プレイ時に浮遊体を載せるカードや【タイタン / TITAN】は獲得を早めつつ消費も早まるので、受け皿さえあればかなり有効です。また、《金星飛行船団》は消費にアクションを使わないので無理なく貯められますし、《タイタン・シャトル / TITAN SHUTTLES》は貯めて一気に消費した方が効率が良くなるため、称号との相性は良いでしょう。

企業自体が受け皿で、浮遊体ドローもある【セレスティック / CELESTIC】との相性が最も良く、【ストームクラフト / STORMCRAFT INCORPORATED】【明けの明星 / MORNING STAR INC.】がそれに続きます。ヘラスボードを使用しているなら【偏心王 / Excentric】も狙えるに越した事はありませんが、他のマップに比べて称号の達成時期が早いため【滞空卿】 自体が獲りにくいです。

 

c) 褒章

【金星王 / Venuphile】 金星タグの数

カード枚数を参照する称号 / 褒章 の例に漏れず、結局のところコスト減少カードとドロー強化カードと生産力をバランス良く出せているプレイヤーが優位に立ちがちです。

ただ、金星タグを持つカードは32枚しかなく、拡張が増えれば割合はさらに低下します。他に金星タグが無いとコストパフォーマンスに欠けるカードが多いため、カード枚数が多いプレイヤーが獲得できるとは限りません。そのためカード枚数があまりないプレイヤーが狙いたい褒章になる状況は結構あります。

金星タグを持つイベントカードは2枚しかないため、【明けの明星】にはかなりアドバンテージがあるでしょう。

 

2) プレリュード

a) 概要

プレリュードカード35枚、プロジェクトカード7枚、企業カード5枚からなる、カードのみの拡張です。

プロジェクトカードはさほどインパクトは無いものの、【ヴィトール / ViTOR】は少人数戦だと別格の強さで、他もそこそこ使える中堅企業が並んでいます。

ウリは何と言ってもプレリュードカード。強力なカードを条件もなく基本的にはタダで、かつ2枚も使えるという破格っぷり。『プレリュード』入りだと概ね2~3ラウンド早く決着が付く傾向にあります。

基本セット+プレリュードだとかなり終了ラウンドが早まり、プレリュードの引きで勝敗が決まりかねないので個人的にはお勧めしません。5人戦なら尚更ですが、理論上は【国連火星動議 / UNMI】が最も輝くフォーマットです。

『ヴィーナス・ネクスト』で長引く傾向にあったラウンド数を元に戻す効果が期待されるので、『ヴィーナス・ネクスト』と『プレリュード』をセットで入れる / 入れない を選択すべきでしょう。

 

 b) プレリュードカード評価

レート的には《国連火星動議の施工請負 / UNMI CONTRACTOR》の33MCから《イオ研究基地 / IO RESEARCH OUTPOST》の13MCまでと結構バラつきがあります。ただ、このレートはタグの価値を考慮してないので、概ね21MC~33MCの範囲内と考えて良いでしょう。

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個人的にはこの12枚が強いと考えています。《金属企業 / METALS COMPANY》《バイオラボ / BIOLAB》《国連火星動議の施工請負》はボーダーライン。

MC産出の上がる《提携銀行 / ALLIED BANKS》《企業帝国 / BUSINESS EMPIRE》は比較的万能で、タグ目的なら《研究ネットワーク / RESEARCH NETWORK》《イオ研究基地》《ガリレオ衛星採掘権 / GALILEAN MINING》か、妥協して《バイオラボ》を取る事が多いです。

《寄付 / DONATION》《融資 / LOAN》は初期MCの少ない企業にとっては救世主的存在で、『コロニーズ』入りで【月 / LUNA】【トリトン / TRITON】【冥王星 / PLUTO】のうち1つだけ出ていると、初手でコロニー建設できないと勝ち目がほぼ消える状況さえあり得る (特に4人戦) ので、【採掘ギルド / MINING GUILD】【惑星間シネマティクス / INTERPLANETARY CINEMATICS】【フォボログ / PHOBOLOG】にとっては必須と言っていいです。

もちろん他の企業でも有効ですが、初手に有効な産出カードが無いか、産出カードが宇宙タグだった場合には《軌道組み立て施設 / ORBITAL CONSTRUCTION YARD》《宇宙局の私有化 / ACQUIRED SPACE AGENCY》等が優先される事もあります。特に《融資》はMC産出-2を補うかそれ以上のMC産出カードを出せるかを考える必要はあるでしょう。

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他に選ぶ可能性があるのはこれらのカード。

電力カード3枚は『プレリュード』までだとあまり使いませんが、『コロニーズ』入りなら交易船を飛ばすのに電力産出+3が最も有効なため、先の12枚を押しのけて採用しうるカードです。

都市カード2枚はヘラスボードの【南極 / SOUTHE POLE】【分散投資家 / DIVERSIFIER】、基本ボードの【総督 / MAYOR】を狙う、あるいは【タルシス共和国 / THARSIS REPUBLIC】を使うなら優先度は上がるでしょう。最も相性が良いのは都市建設がネックになりやすい【エコライン】かもしれません。

《社会支援 / SOCIETY SUPPORT》はエリシウムボードの【万能家 / GENERALIST】を目指すか、【ロビンスン産業体 / ROBINSON INDUSTRIES】を使うなら相性は良さそうです。

《富金属小惑星 / METAL-RICH ASTEROID》《補給物資の投下 / SUPPLY DROP》は建材もチタンも使えるなら《寄付》《融資》を押しのける場合もあります。

《一風変わったスポンサー / ECCENTRIC SPONSOR》は状況が揃えば《寄付》の上位互換にもなる強力なプレリュードなのですが、初手にコストが重くて1ラウンド目から出したいプロジェクトカードがある確率は低く、意外と使えません。(個人的には1回しか使ったことないです)

https://ssimeonoff.github.io/ の START HAND SETUP で

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 filterにチェックを入れると、選んだエキスパンションの初手をシミュレートすることが出来るので、試してみるのもいいかもしれません。

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仮にこの状況で《巨大氷小惑星 / GIANT ICE ASTEROID》引いてたとしても、《超巨大小惑星 / HUGE ASTEROID》を選択しそうですし。

 

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個人的にはできれば使いたくないプレリュード。

植物産出は序盤の拡大再生産にほとんど寄与しない上に、「隕石落とすついでに焼かれる」状況がままあるので、あまり役に立ちません。《ドーム農法 / DOME FARMING》はMC産出+2があるので、まだ選ばれる可能性はあります。

発熱産出は隕石の影響こそ無いものの、序盤の拡大再生産にほとんど寄与しないという点では同じです。もちろん【ヘリオン / helion】なら別ですが。

建材産出は序盤に出したい建物カードがあるなら優先度は上がりますが、拡張の建物カードは9/105しかなく、基本セットから比べると建材の価値はかなり低下しています。

《生態系のエキスパート / ECOLOGY EXPERTS》はユニークな効果を持ちますが、他人の植物産出を減らしたとしても《魚類 / FISH》などのVPカードは拡大再生産に繋がらないため、多人数戦でなければ微妙でしょう。MC産出が増える《家畜 / LIVESTOCK》《海藻畑 / KELP FARMING》等なら出す価値はあるかもしれません。

TR上昇カードはMC産出が増えるようなものなので、この中ではマシな部類に入ります。理論上は人数が多いと終了ラウンドが早まり、得点がデフレ化するため価値は上がるはずです。

 

c)  プロジェクトカード評価

7枚しかないので全部解説します。

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《軌道ホテル / SPACE HOTELS》は効果こそ強力ですが、地球タグを持つカードは企業5枚、プレリュートに3枚、非イベントカードが25枚で、そのうち地球タグの条件を持つカードが5枚あるため、金星タグ2つが条件の《金星総督》と同じくらいにハードルが高いにも関わらず、同じく黒字化に4ラウンド掛かるので使い勝手は悪いです。コストの下がりやすい宇宙タグを持っているので、黒字化が短くなる可能性が高いのは救い。

《プリンティング・ハウス / HOUSE PRINTING》はレート通りの地味カード。産出力と得点を同時に稼ぐTR上昇カードにも同じことが言えますが、序盤にありがちな産出力がボトルネック (bottleneck スムーズに進行しない原因) の場合は必要とされず、終盤ありがちな手札がボトルネックの場合はキープされる事が多いでしょう。建材フラッドな状況では1VPカードになります。

 《SF記念碑 / SF MEMORIAL》はレートより2MC高いものの、タグを考慮しなければ《ラグランジュ観測所 / LAGRANGE OBSERVATORY》より2MC安く、やはり手札がボトルネックの場合には使われます。

《火星探査 / MARTIAN SURVEY》はVP付きのドロー強化なので、序盤には打ちづらく中盤以降に出したいカードなのですが、最大条件がそれをさせにくくしています。酸素濃度は序盤から上がりづらいため出せるタイミングは比較的ある方ですが、【地球政府のテラフォーミング / World Government terraforming】や酸素濃度を上げるアクションカード次第では打てるタイミングが無い場合もあります。

《溶岩洞開拓施設 / LAVA TUBE SETTLEMENT》はこれといった特徴がないのが特徴で、ヘラスボードなら条件のない数少ない都市カードとしてそれなりに使えますが、それ以外だと後半該当場所が埋まっている事が多く、概ね《開放都市 / OPEN CITY》の下位互換でしょう。

 《低温菌》は中盤以降に出す事が多い植物タグカードのみ効果を使用できるため、序盤の拡大再生産にはあまり寄与しません。ただ、3ラウンド目で既に元が取れる抜群のコストパフォーマンスに加え、【分散投資家 / DIVERSIFIER】【戦術家 / TACTITIAN】を取るにもうってつけと、一見地味ながらも中々の強カードです。最大の欠点は使用条件の厳しさで、2ラウンド目には既に出せない状況もあり得ます。

《共同研究》は単独では何もしない「置物」ですが、序盤の称号なら【建設師 / BUILDER】【分散投資家】【外縁入植者 / RIM SETTLER】【生態学者 / ECOLOGIST】の4つに有効と、どのマップでも効果があります。また、タグ条件のあるカードは35枚もあり、そのほとんどが強力カード。受けがかなり広くなります。基本的には「初手に嬉しいカード」です。

 

3) コロニーズ

a) 概要

プロジェクトカード49枚、企業カード5枚、コロニーカード11枚からなる拡張です。

最大の特徴はもちろん【コロニー / COLONIE】の存在です。

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詳しいルールは他のサイトを参照してもらうとして (例えばココ) 、コロニー建設、コロニーとの交易をいかに活用するかが勝利の鍵となります。交易の効果が強力で、かつ交易コストとして 9MC / 3電力 / 3チタン のうちいずれかを消費するというルールにより、電力産出が重要になりました。

また、交易が各星へ1ラウンドに1回しかできないため、手番順がかなり重要となります。

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『コロニー』がメインのギミックだけあって、コロニーを設置するプロジェクトカード8枚など、コロニー関連のプロジェクトカードが19枚、企業が2枚あります。

また、条件のあるカードが18/49枚で比較的多いのと、やたらと強いプロジェクトカードがあるのも特徴です。

 

b) コロニー評価
空論 テラフォーミング・マーズ(2) でも書きましたが、プロジェクトカード等のコストは概ね変換レートに沿った形になっています。

タイル配置=標準プロジェクト=4MC

1VP=クレジット産出+1=5MC

発熱産出+1=6MC

電力産出+1=7MC

建材産出+1=8MC

チタン産出+1=1TR(1VP+クレジット産出+1)=植物産出+1=10MC

※カードキープ代3MC含む

Subject: A Quantified Guide to TM Strategy

(ちなみに『テラフォーミングマーズ解体新書』では植物産出+1 = 12MCと計算していて、感覚的にはそちらの方が正しいように思います)

毎ラウンド 9MC / 3電力 / 3チタン を生産するために必要なMCは、レート通りに生産できたと仮定するならば以下のようになります。

MC+9 = 9*5 = 45MC

電力+3 = 3*7 = 21MC

チタン+3 = 3*10 = 30MC

このように交易コスト分を生産するのに最も安価な資源が電力なので、『コロニーズ』では電力産出+3にすることが重要となりました。もっとも、《タイタン浮遊発着場 / TITAN FLOATING LAUNCH-PAD》や《大気採取施設 / ATMO COLLECTORS》で交易コストを支払う手もありますし、交易コストを下げる《冷凍催眠 / CRYO SLEEP》《外縁貨物便 / RIM FREIGHTERS》があれば電力産出+2でも(両方あれば+1でも)良いですし、《空中ドック / SKY DOCKS》《宇宙港 / SPACE PORT》《宇宙港コロニー / SPACE PORT COLONY》で交易船が増えた時など、さらに電力産出を上げた方が良い場合もあります。

ただし、標準プロジェクトの《発電所の設置/ Power plant》を33MC支払って3回行った場合、最も安価な交易コストというメリットを台無しにしてしまいます。せっかく選択肢があるのですから、MCやチタンで支払う事も考慮に入れましょう。

 

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コロニーはこの3枚が3強。

標準プロジェクトからコロニーを建設する場合には17MC必要ですが、【月 / LUNA】は建設ボーナスとしてMC産出+2を得ます。レート的には10MCの効果でしかありません。

ただし、コロニーを建設していた場合、【月】との交易が行われると2MCのボーナスが貰えます。毎ラウンド交易が行われた場合 (実際にほぼ行われます) 、MC産出+4を得たのに等しくなります。レート的には20MCの効果で、この段階で既に優秀です。

【月】にコロニーが3箇所建設されていた場合 (実際にはほぼ建設されます) 、基本的には交易すると10MC+自分のコロニー1箇所につき2MCを得ます。9MCや3チタンを使ったならばあまりメリットはありませんが、電力3で《軌道エレベーター / SPACE ELEVATOR》と《電磁カタパルト / ELECTRO CATAPULT》を足したMCが入ることになります。

これらの効果をプロジェクトカードなしで出来るのが最大の強みです。強力であるが故に4人戦で【月】が出た場合、4番手はかなり苦しい戦いを強いられます。【トリトン / TRITON】も同時に出ていなければ、ほぼ勝ち目は無いと言っても過言ではありません。(※追記 言い過ぎでした)

 

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理論上は1ラウンド目にコロニー建設+《研究コロニー / RESEARCH COLONY》か《宇宙港コロニー》で2箇所抑えられる可能性はありますが、今の所見たことはありません (2ラウンド目ならあります) 。これらの理由で、個人的に『コロニーズ』は3人専用ゲームだと考えています。4人よりは2人の方がマシかもしれません。

トリトン】も【月】に匹敵する強さをもつコロニーです。建設時に3チタンを得るので、差し引きのコストは実質8MC。交易されるとチタン1が降ってきて、《チタン鉱山 / TITANIUM MINE》がキープ代込みで10MCなので、それ以上の効果をプロジェクトカード無しでプレイ出来る事になります。チタンを得る分【月】より汎用性は落ちますが、《最先端合金 / ADVANCED ALLOYS》を出している場合など、【月】以上の強さを発揮することもあります。

冥王星 / PLUTO】は建設時の2ドローはレート的に6MCの効果しかなく、交易時のかき回し (Rummage 1枚引いて1枚捨てること。MtG用語) 効果も手札が増える訳でもなく、生産力が上がるわけでも無いので一見地味です。

冥王星】が本領発揮するのは中盤以降にコロニーが3つ建設された時で、3電力消費で3ドローと、《開発センター / Development Center》を3回起動したのに等しくなります。一度でも交易すれば大抵使わないカードが混じってくるので、かき回し効果はより効果的になるでしょう。

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特にコスト減少カードを複数出していると【冥王星】の影響でプレイ枚数が飛躍的に伸びます。(画像は10ラウンド終了した際のプレイ済カード)

 

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状況次第で使えるのがこれらのコロニー。

【ケレス / CERES】はレート的にはコロニー建設で建材産出+1、交易で2建材と【月】さえも上回るのですが、建物タグの割合が基本セットの67/208 (32.2%) から拡張コミコミで76/313 (24.2%) と大幅に低下し、さらに地上戦の重要度が下がったため13枚ある建物 / 都市 カードも弱体化と、 建材がチタン以上に汎用性のない資源になったため、思ったほど強さは発揮されません。汎用性が下がったが故にコロニー建設が進まず、交易の効率が下がるのも痛手。

とは言え建物タグカードが豊富にあれば有用ですし、資源が溜まった段階で交易すれば十分利益は出ます。少なくとも全く無視されるコロニーではありません。

 

ミランダ / MIRANDA】は1VPの動物を持っているプレイヤーが何人いるかで強さが変わります。序盤に建設されることは稀。中盤に2箇所埋まることが多いので、《交易大使 / TRADE ENVOYS》《交易コロニー / TRADING COLONY》で毎ラウンド動物2匹取れる体制を作るのが理想です(大抵他のプレイヤーにカットされますが) 。1ドローの交易ボーナスは、かき回し効果とは違って手札が少ない場合でも有効なので、動物の受け皿がなくてもコロニー建設することはあります。

【タイタン】は浮遊体、【エンケラドゥス】は微生物の受け皿があればかなり有効です。1~2箇所のコロニー建設が多いので、毎ラウンドの交易はあまり効率的ではなく、どちらかと言えば強力なコロニーと交易できない時の保険として使われます。こちらも《交易大使》《交易コロニー》の補助が欲しいところ。

 

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ほぼ空気なのがこの4枚。

【ガニメデ / GANYMEDE】は建設時に植物産出+1、交易時に1植物。レート的には植物産出+1 = 10MCなので、仮に毎ラウンド交易されれば20MC相当。 (『テラフォーミングマーズ解体新書』のレートだと24MC) 

【イオ / IO】は建設時に発熱産出+1、交易時に2発熱。レート的には発熱産出+1 = 6MCなので、仮に毎ラウンド交易されれば18MC相当。どちらも悪くはないのですが...

実際にはコロニー建設される事はほとんどありません。

プレリュード評価でも書きましたが、植物産出も発熱産出も序盤の拡大再生産にほとんど寄与しないため、序盤にコロニー建設はほぼされません。かと言って中盤以降になると、コロニー建設の搦め手で酸素濃度や気温を上げるよりは、標準プロジェクトで上げた方が手っ取り早いため、産出目的でコロニー建設されることはあまりありません。

他のコロニーが交易済の状態で、8発熱溜まっていた時なら「1TR入るならアリか」といった風に、仕方なく交易される場合が多いでしょう。

カリスト / CALLISTO】は「1ラウンド後に1TR入るならアリか」と、むしろ【イオ】のほぼ下位互換。そもそも交易する為に電力を必要としてるのに、交易で電力を得てどうすんねんという矛盾が(苦笑)

交易船が3艘あるものの電力産出+2しかない状況で【カリスト】にコロニー建設&毎ラウンド交易した事が1回だけありましたが、今後交易船を増やすカードが新たに出ない限り、個人的には【カリスト】へのコロニー建設は最初で最後だと思われます。

さらに空気なのが【エウロパ / EUROPA】で、植物産出+1になっても見向きもされない場合すらあります。建設ボーナスが標準プロジェクトの《帯水層の開放 / Aquifer》より1MC安いもののレート的には3MC割高だったり、交易ボーナスが9MC払って電力産出+1だと《発電所の設置/ Power plant》より2MC安いもののレート的には2MC割高で、さらにはコロニーボーナスも【月】の半分の1MCしかありません。

結果的にMCフラッドで「標準プロジェクトやるよりはマシ」な状況にならないと使われない性能になっています。レート的には植物産出+1なら9MC支払っても割安ですし、理論上は【万能家 / SPECIALIST】を取るのに植物産出だけが足りない状況なら、さらにお得でしょう。

 

c) プロジェクトカード評価

概要でも書きましたが、『コロニーズ』のカードは妙に強いです。

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割とぶっ壊れてる (バランスを壊すくらい強力な) カード群。

例えば《地球エレベーター / EARTH ELEVATOR》はVP固定になった《イオ採掘産業 / IO MINING INDUSTRIES》と言えますし、《生態系の研究 / ECOLOGY RESEARCH》は唯一のタグ4カードな上に効果も強く、《量子通信 / QUANTUM COMMUNICATIONS》《ガリレオ中継ステーション / GALILEAN WAYSTATION》は基本セットの《飛空船 / ZEPPELINS》並かそれ以上にMC産出を増やしてくれます。コストを下げる《空中ドック》《ワープ航法 / WARP DRIVE》は効果だけでも強力な上に何故2点も付いてるのか意味不明なレベルです。それだけタグ条件が厳しいのですけども。

 《スピンオフ部門 / SPIN-OFF DEPARTMENT》は即時効果だけでも4MC重い《スポンサー》ですし、レート的には1ドロー = 3MC なので、2枚引ければ元は取れます。何気に建物タグなのも悪くないです。(宇宙タグならもっと凶悪になってたでしょう)

《月よりの輸出 / LUNAR EXPORTS》は《移民シャトル / IMMIGRATION SHUTTLES》と違ってVPが付かない代わりに12MCも割安。後半引いた場合は旨味がありませんが、植物産出で得点に変換できる場合もあるでしょう。

 

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コロニー建設できるプロジェクトカードはどれも強力。そもそも標準プロジェクトからコロニー建設するアクションが強力で、それより弱ければこれらのプロジェクトカードは使われないのですから、ある意味当然の結果でしょう。

《氷床コロニー / ICE MOON COLONY》は若干余計なものが付いてる感はあるものの、標準プロジェクトのコストに9MC (キープ代含む) 足せば海洋配置できるなら悪くはないです。

特に強力なのが《交易港コロニー》で、「コロニーが増える ≒ 交易したい場所が増える」となるため、交易船が増える効果は無駄になりません。その上《移民シャトル / MMIGRATION SHUTTLES》のようなVPが付き、大抵は3~5点入ります。条件も実質最初のアクションでは使えない、くらいの緩さです。

全てが宇宙タグ付きというのもミソ。チタンを消費できますし、コストも下がりやすいです。

 

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49枚中7枚が木星タグ、その全てが浮遊体カードなのも特徴です。その中でも《木星ランタン / JOVIAN LANTERNS》《大赤斑の探査 / RED SPOT OBSERVATORY》《タイタン浮遊発着場》はプレイ時にも効果を発揮するため、浮遊体カード特有の立ち上がりの遅さを自己解決しています。《木星浮遊ステーション / JUPITER FLOATING STATION》は序盤で出すには厳しい条件に加えて立ち上がりも遅く、産出カードとしては弱い部類に入りますが、他の木星カードに浮遊体を載せられる柔軟性はあります。最大条件がないローコストな木星カードというだけで十分有用です。

 

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その他、解説が必要な気がするカードたち。

《徴集制 / CONSCRIPTION》は「一時的に資産を増やすカード」の例に漏れず、序盤で使うとかなり強力です。特に手札が溢れ、産出力がボトルネックになっている場合には重宝します。理論上は拡大再生産モデルを使うと、10R決着のゲームで2ラウンド目に-1VPの代わりに8MCを得た場合、最終的に+3VP (差し引き+2VP) の効果を得られる計算にはなります。逆に最終ラウンドで「このカード出せれば後3点伸びたのに」というような状況に、1点目減りするのを我慢して出す方法が一番使いやすいのは確かです。

《分子プリンティング / MOLECULAR PRINTING》も概ね「一時的に資産を増やすカード」として使われますが、序盤に出しても資産はさして増えないため、基本的には最終ラウンドに出すカードです。ただし、少しでもMCが増えて、それが拡大再生産へと繋げられる場合はその限りではありませんし、条件のない科学タグとして出す場合もあります。

《肥沃な前哨基地 / PRODUCTIVE OUTPOST》も「一時的に資産を増やすカード」ですが、効果を考えれば後半になることが多いですし、キープ代込みだと2箇所にコロニー建設していないと元は取りにくいでしょう。ちなみに同じ惑星に2箇所コロニーを建設していた場合、2箇所分のコロニーボーナスが貰えます。

《コミュニティー・サービス / COMMUNITY SERVICES》は単独だとキープ代込みで16MC、MC産出+1と1VPではレート的に10MCなので、かなり割高です。タグ無しカードがもう1枚あれば若干高い程度、3枚ならレート的には元が取れます。

 《浮遊体テクノロジー / FLOATER TECHNOLOGY》は序盤に出して産出力を高める可能性がある数少ない科学タグのカードですが、効果自体は地味。プレイ条件のない科学タグカードとして使う事の方が多い気がします。

 《難民キャンプ / REFUGEE CAMPS》は毛嫌いされがちですが、最終ラウンドだけ使うならキープ代込みで1VPに13MCと効率悪いものの、計算上掛かるコストは2VP=14MC (MC産出が下がる効果を含む) 、3VP=16MC、4VP=19MC、5VP=23MC、6VP=28MC、7VP=35MC、8VP=43MCとなり、4~7ラウンド起動ならレート上は元が取れますし、少なくともチタンフラッドな状況でなければ《警備艦隊 / SECURITY FLEET》よりコストパフォーマンスは高いです。基本的には拡大再生産から得点行動へと移行しがちな残り4~5ラウンドの時を見計らって出すカードで、標準プロジェクトを使うようなMCフラッド状態なら使えます。