機上の九龍

The kowloon on an aeroplane

空論 テラフォーミング・マーズ(3)

現時点での『テラフォーミング・マーズ / Terraforming Mars』の見解を纏めておきます。

今回はボードの特徴について。

企業評価から先に書きたいのはやまやまなんですが、どの拡張を導入するかでかなり評価が上下するので、その辺りを押さえておかないと書きにくいなと。

テラフォーミング・マーズ拡張 ヘラス&エリシウム 完全日本語版

テラフォーミング・マーズ拡張 ヘラス&エリシウム 完全日本語版

 

拡張に関しては週2回程度を半年やってるんで概ね掴んでいるとは思います。『ヴィーナス・ネクスト / VENUS NEXT』『プレリュード / PRELUDE』『コロニーズ / COLONIES』に関連するものは触れますが、プロモーションカードや『動乱 / TURMOIL』に関してはほぼ触れません。何回か出てくる「拡張コミコミ」という表現は、「基本セット+ヴィーナス・ネクスト+プレリュード+コロニーズ」でプレイした場合の事を指しています。

ちなみに私は「盤面・称号・TR軽視のプロジェクトカード重視派」なので、そういった視点から書かれていることを念頭に置いて下さい。戦いはプレイ済カードの厚さだよ兄貴。

また、基本的には非ドラフト前提で書いています。

 

参考文献・サイト・スレッド

テラフォーミングマーズ解体新書

このブログ見てる暇あったらこの本買って読んだ方が良い、というレベルでお勧めの本です。明らかにBGGを参考にしているのに一切触れられてなかったり、「初手にあると嬉しいカード」というどっかで聞いたことのある表現だったりが若干モヤっとはします(苦笑)

ただ、現状入手困難なんですよねー。もっと増刷して欲しい。

Board Game: Terraforming Mars (Board Game Geek)

https://ssimeonoff.github.io/cards-list

 

空論 テラフォーミング・マーズ(4)

『ヴィーナス・ネクスト』『プレリュード』『コロニーズ』について書いています。

空論 テラフォーミング・マーズ(2)

基本セット段階での企業評価と、変換レートについて書いています。

空論 テラフォーミング・マーズ(1)

企業評価(所感)と、プレイ人数による影響について書いています。

 

目次

1) 基本ボード

2) ヘラスボード

3) エリジウムボード

 

1) 基本ボード

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a) 概要

【称号 / MILESTONES】のうち【総督 / MAYOR】【緑化匠 / GARDENER】、【褒章 / Awards】のうち【開拓王 / Landlord】が地上戦 (都市と緑地で盤面点を稼ぐ戦法) を強力に後押しをするボードです。海洋予定地が直線状に並んでいるため、比較的海洋配置のメリットが下がる  (海洋配置で4MC獲得するのは稀、6MC獲得はできません)  反面、それ以外のタイルが海洋隣接ボーナスを得られやすくなっています。特に《首都 / CAPITAL》は3点ボーナスを4箇所で取得可能なボードでもあります。

 

b) 称号 / MILESTONES

【造星者 / TERRAFORMER】 TR35以上

キックスターター版『動乱 / TURMOIL』に【造星者 / TERRAFORMER】 TR26以上 というタイルが付属するくらいに要求値が高く (どうも仕様が変更される模様) 、現状ではほぼ無視される称号です。3人戦では稀に取得される事がありますが、少なくとも最初から狙いに行く称号ではないでしょう。

一応【国連火星動議 / UNMI】が最有力なものの、現状は【造星者】のハードルが高いことが、この企業を最弱たらしめている原因の1つとなっています。仕様変更されれば最も取得率が高くなると思われますが、それでも【UNMI】はまだ弱い気はします。

 

【総督 / MAYOR】 都市タイル3枚以上

【タルシス共和国 / THARSIS REPUBLIC】が有利な称号で、特に基本セットのみだと圧倒的です。ただ、火星以外の都市タイルもカウントしますし、『プレリュード』入りだと《最初の火星人 / EARLY SETTLEMENT》《自給自足型開拓地 / SELF-SUFFICIENT SETTLEMENT》が都市を配置できるため、多少その優位は下がります。他にも【クレディコー / Credicor】が比較的有利です。

 

【緑化匠 / GARDENER】 緑地タイル3枚以上

一見【エコライン / ecoline】が有利な称号に思えますが、植物産出だけで3枚配置するとなると意外に遅くなるため、標準プロジェクトを絡めた【タルシス】や【クレディコー】に分があります。

 

【建設師 / BUILDER】 建物タグ8つ以上

カードを適当にプレイしているだけで揃う場合もあり、ほぼ取得される称号です。拡張が増えれば増えるほど建物タグの比率が下がるため、取得されない事も稀にあります。

タグが2つある【採掘ギルド / MINING GUILD】が一見最有力ですが、タグ1つでも建材20を持つ【惑星間シネマティクス / INTERPLANETARY CINEMATICS】の方が有利と見ます。建物タグのコストが下がる【城星マーズ / Cheung Shing MARS】、産出カードを連打する【マニュテク / MANUTECH】などこの称号を狙いたい企業は多く、割と競り合いになります。

 

【創案主 / PLANNER】 手札16枚以上

テラフォーミング・マーズ』は資源 (resourcies) を使って生産力 (production) を伸ばしてより多くの資源を獲得し、それを使ってさらに生産力を伸ばす...いわゆる拡大再生産 (extended reproduction) のゲームです。「手札にキープする枚数が多い=資源を余らせて生産力を伸ばせずにいる」ことになるので、基本的には狙いに行かない方が良い称号です。

基本セットのみでは【造星者】より頻度が低い称号ですが【インヴェントリックス / INVENTRIX】【明けの明星 / MORNING STAR INC.】を使った上にプレリュードでカードを何枚か引く、といった状況では狙うのも悪くないですし、ドロー強化カードが多かったり、【冥王星 / PLUTO】と盛んに交易できたなら狙いに行く価値がある場合もあります。

少なくとも多人数戦では残った手札を捌ききれる可能性が低いので、少人数向きの称号だとは言えます。

 

c) 褒章 / Awards

【開拓王 / Landlord】 地図上のタイル枚数

概ね緑地の枚数が決定打になるため、【エコライン】が最有力になります。他にも地上戦に分のある【タルシス】【クレディコー】が比較的有利でしょう。【マニュテク】は植物産出カードさえ引けば、意外と緑地が伸びます。この4企業が他のマップでも地上戦を戦い易いです。

《ガニメデ・コロニー / GANYMEDE COLONY》《フォボス宇宙港 / PHOBOS SPACE HAVEN》や、金星の都市もカウントするのを忘れがち。

 

【銀行王 / Banker】 MC産出量

基本セットでは勝手にMC産出が伸びる【タルシス】が有力ですが、MC産出が一気に10近く伸びる事がある《飛行船 / ZEPPELINS》《税関ステーション / TOLL STATION》、『ヴィーナス・ネクスト / Venus Next』の《回転都市(ジャイロポリス) / GYROPOLIS》等で一発逆転がある褒章です。

『コロニーズ』入りでは【ポセイドン / POSEIDON】【アリドール / ARIDOR】が有力となりますが、《飛行船》はともかく《税関ステーション》はさらに凶悪化しますし、《ガリレオ中継ステーション / GALILEAN WAYSTATION》《量子通信 / QUANTUM COMMUNICATIONS》もあるのでリスクはむしろ増加します。

 

【科学王 / Scientist】 科学タグの数

基本セットでは科学タグのプロジェクトカード33枚中、イベントカードが3枚、科学タグ3枚以上のカードが5枚、その他条件のあるカード6枚と、条件が無い上に【科学王】にカウントできるカードが19枚しかないので意外と少なくても取れる称号です。期待値的には4枚で十分取れるのですが、競り合いになると「科学タグ3以上」といったカードもプレイ可能圏内に入るため、5~6枚は必要でしょう。基本ボードの中では最も取得率が高い褒章ですし、タグ2つで2位タイになることもあるので、1つもない場合でも一応関心は持ちましょう。

拡張入りだとプレイするカード枚数が劇的に増えるため、コスト減少カードとドロー強化カードと産出力をバランス良く出せているプレイヤーが優位に立ちがちです。ドロー強化やコスト減少カードに科学タグが付いていたり、タグ条件になっている場合が多いため、他の称号に比べて前者2つがより重要となります。

 

【温熱王 / Thermalist】 発熱の残り資源量

基本的には発熱で気温を上げていたプレイヤーが取ることになると思います。余熱 (資源として価値が無くなった発熱) を再利用できれば効率が良いですが、競り合われると余熱の産出を増やすことになったり、余熱を温存するために標準プロジェクト《小惑星の誘引 / Asteroid》を使うハメになったりと、かなり効率が悪化します。とは言え他に有望な褒章がなければ選択せざるを得ないでしょう。

問題となるのは【ヘリオン / helion】の場合。企業効果が「余熱の再利用」で被っているため、構造的には【ヘリオン】と【温熱王】はディスシナジー (dis-synergy 単体で使った時より効率が悪くなる) となります。とは言え【ヘリオン】で他に狙いやすい褒章が無いので、目を瞑って取らざるを得ない場合が多いでしょう。端数を調整できれば理想ですが、その為には「1枚捨てて一旦手番終了」などで競った相手がハードパスするまで待つ、牛歩戦術に似たプレイングが有効となり得ます。

基本セットでは最終ラウンドより前の《省エネルギー対策 /ENERGY SAVING》が、『コロニーズ』では《衝突体群 / IMPACTOR SWARM》が一発逆転の可能性を秘めています。

 

【採掘王 / Miner】 建材とチタンの残り資源量

基本セットではチタン産出がそれほど増えず、建材の1.5倍の価値の資源を余らせるのは効率が悪いので、概ね建材産出量と残った建材で勝敗が決まります。後半建材フラッド (steel flood = 建材が余る状態) になりがちな【採掘ギルド】が早めに取る称号です。

ただ、「資源が余る ≒ 資源を活用できていない」となるため、単純に建材産出量が多いからと取りに行くのは考えもの。こちらも【温熱王】同様、競り合われると不毛になりがちです。

残り建材や産出力だけに目が行っていると《鉱物堆積層 / MINERAL DEPOSIT》《雇われ襲撃者 / HIRED RAIDERS》《サボタージュ / SABOTAGE》などでひっくり返される恐れはあります。なるべく少ない残り建材で褒章を穫れるに越したことはないため、やはり牛歩戦術に似たプレイングが有効となります。

拡張込みではかなりチタンの産出量が上がりますし、惑星【ケレス / CERES】【トリトン / TRITON】があると比較的コストを掛けずに建材フラッド / チタンフラッド になる場合があり、コストに見合った褒章となる場合はあります。

 

d) 基本セットのコンセプト

プレイには直接影響ないので、プレイの参考に読んでる人は読み飛ばしてもいいかも。

 

基本セットからは「ギミック (gimmick / 仕掛け) を活かす」意図が感じられます。

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例えば【タルシス】や【総督】は「都市を配置する」というギミックにさらなるメリットが与えられています。これによってプレイヤーはこのギミックを使うように誘導されますし、仮にこのギミックが弱かった場合でも【タルシス】なら使えるといったような保険にもなります。

この見方で企業やカード、称号 / 褒章をみると

緑地配置 : 【エコライン】【緑化匠】

パネル配置 : 【採掘ギルド】

高コストカード使用 & 地上戦 : 【クレディコー】

使用条件のあるカード : 【インヴェントリックス】

こういったギミックを活かそうとする意図が感じられるのではないでしょうか。

残念ながら「TRを上げる」ギミック自体は成功したものの、それを活かそうとした【造星者】【国連火星動議】はほぼスルーされ、発熱を活かそうとした【ヘリオン】【温熱王】はディスシナジー気味、電力は【トールゲート / THORGATE】だと力不足で、『コロニーズ』になってようやく活用方法を見いだせたと言えそうです。逆に木星タグは基本セット単体では割と成功しているものの、「木星タグ1つにつき1VP」のカードは拡張が増えるにつれバランスブレイカーになっていきます。

ギミック重視のためか、【分散投資家 / DIVERSIFIER】のようなセットコレクション要素は《高度な生態系 / ADVANCED ECOSYSTEMS》しかありません。

 

2) ヘラスボード

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a) 概要

個人的に『テラフォーミング・マーズ』の良い点の1つに番手の有利不利があまりない事が挙げられたと思うのですが、このマップは【南極 / SOUTH POLE】【極地探検家 / POLER EXPLORER】という1番手有利のギミックが2つあり、かつシナジー (synergy 単体で使った時より効率が良くなる) を形成しています。

仮に【南極】に配置し、追加の6MCを支払った海洋配置でチタン2を得たとすれば、レート的には1TR+2チタン=16MCなので、10MC得する計算にはなります。標準プロジェクトは4MC割高に計算されているので、標準プロジェクトで都市や緑地を置いてもまだ6MCの得になります。(あくまでレート的には、ですが)

 

序盤は南極付近が、中盤からは【耕作王 / Cultivator】狙いの上半分が競合しやすいです。発熱を拾えるのもこのマップの特徴ですが、大勢には影響しません。

また、《溶岩流 / LAVA FLOWS》は予定地が存在しないので、海洋予定地以外の火星上どこにでも置けますし、《ノクティス市 / NOCTIS CITY》《溶岩洞開拓施設 / LAVA TUBE SETTLEMENT》は通常の都市配置のルールに従います。

プレイしたカード枚数を参照する称号 / 褒章 が多いため、プロジェクトカード重視のプレイが最も恩恵を受けるマップです。

 

b) 称号 / MILESTONES

分散投資家 / DIVERSIFIER】 8種類以上のタグ

よっぽどの事がない限り獲得される称号です。

拡張コミコミだと、タグ全12種類のうち【分散投資家】にカウントされないイベントタグは52/313枚、タグの無いカードはプロジェクトカードに16枚、企業に5/29枚、プレリュードカードに11/35枚あるので、約77%のカードがカウントされることになります。

影響を与えるタグのうち、最も多いのが建物タグの76枚 (24.2%) 、次に宇宙タグの51枚(16.1% イベントカードを除く) 。最も少ないのがワイルドタグの2枚、次いで動物タグの15枚 (【アークライト / ARKLIGHT】含む) 、その他は20~30枚程度になっています。

どの企業でも狙えない事もないですが、初期MCが少なくタグが偏りやすい【採掘ギルド】【IC】【フォボログ / PHOBOLOG】や、TR重視なためイベントカード重視になりやすい【UNMI】、カードキープのコストが高い【ポリュペモス / POLYPHEMOS】では狙いにくい称号でしょう。

逆に狙いやすい企業は、タグは無いものの企業効果と方向性が同じ【アリドール】や、マイナーなタグを持つ【アークライト】【アフロディーテ / APHRODITE】、カードをキープしやすい初期MCの多い企業といった辺りになるものの、結局のところプロジェクトカードの引き次第なので、この称号目的に企業を選ぶというのは避けた方が良さそうです。

有効なプロジェクトカードとしては、ワイルドタグの《共同研究 / RESEARCH COORDINATION》と、複数タグかマイナータグを持ちつつ使用条件が緩いものが挙げられます。《前哨研究基地》《オリンパス会議 / OLYMPUS CONFERENCE》《太陽風力発電 / SOLAR WIND POWER》《重水素の輸出 / DEUTERIUM EXPORT》なら一気に3種類揃いますし、《愛玩動物 / PETS》は後半向きな《生態系の研究 / ECOLOGY RESEARCH》を除けば唯一前提条件なしで出せる動物タグです。《低温菌 / PSYCHROPHILES》は序盤に出したいカードな上にコストが安く、条件もあるので【戦術家 / TACTICIAN】にも一歩近づきます。

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そして《開拓民訓練キャンプ / COLONIZER TRAINING CAMP》は複数タグ、条件付き、木星タグ、ついでに【オートマ王 / Magnate】【土建王 / Constractor】と、ヘラスボードにおあつらえ向きのカードです。

また、重要なのがドロー強化カード。タグこそ増えないものの《業務提携 / BUSINESS CONTACTS》辺りは掘る枚数が多くて良い働きをします。

プレリュードカードのタグも有効ですが、【分散投資家】目的で《生態系のエキスパート / ECOLOGY EXPERTS》を選ぶのは考えもの。とは言え《研究ネットワーク / RESEARCH NETWORK》《イオ研究基地 / IO RESEARCH OUTPOST》《ガリレオ衛星採掘権 / GALILEAN MINING》はそもそも強力なプロジェクトカードですし、都市配置の2枚は【南極】も狙えるんで優先度は多少上がってるハズです。

 

【戦術家 / TACTITIAN】条件のあるカード5枚以上

最大条件のあるカードが序盤の戦術とマッチしますが、基本セットのみだと該当カードは11/208枚(そのうち都市2枚は序盤カードとは言い難いです)しかなく、各拡張にも1枚ずつしかありません。かと言って最小条件のあるカード、特にグローバルパラメーターが最小条件だと前半に出すのは厳しいですし、わざわざ【戦術家】目的で《生態系のエキスパート》を選ぶのは考えもの。概ねタグ条件のカードを2枚以上必要とします。そのためかヘラスボードの中では最も取得率が低いです。

タグ条件カード34枚中半数が複数の科学タグを条件とするため、【分散投資家】とはディスシナジー気味になります。

狙いやすい企業としてはグローバルパラメーターと科学タグの条件が緩和される【インヴェントリックス】が最有力。金星タグカード32枚中17枚が条件カードなので【明けの明星】がそれに続き、カードをキープしやすい初期MCの多い企業といった辺りになるものの、結局のところプロジェクトカードの引き次第なので、この称号目的に企業を選ぶというのは避けた方が良さそうです。狙いにくい企業は【分散投資家】とほぼ同じです。

ドロー強化が重要なのも【分散投資家】と同様。《開拓民訓練キャンプ》は他の称号との絡みもありやはり優秀。《金星総督 / VENUS GOVERNOR》のような拡大再生産を後押しするカードは序盤の戦術にもマッチしますし、《小惑星採掘組合 / ASTEROID MINING CONSORTIUM》なら産出力が上がりつつ木星タグと条件もついています。《設計された微細生命体 / DESIGNED MICROORGANISMS》は条件が付きつつ科学タグ条件を緩和できますし、《生命探査 / SEARCH FOR LIFE》もネタで出すようなカードじゃ無くなり、《自然保護区 / NATURAL PRESERVE》は条件が付きつつ科学タグ条件を緩和し、MC産出も上がり、【極地探検家】も狙えるので、さらに効果的になります。もちろんワイルドタグもかなり有効です。

 

【極地探検家 / POLER EXPLORER】 下2列にタイル3枚以上

タイルの種類を問わないため基本ボードの【総督】【緑化匠】より条件は緩く、【南極】がオイシイ上に下から2列目はチタン2箇所カード1箇所のボーナスがあるので、競争になることもしばしば。 (とは言え、個人的には1度しか取った事がありません)

拡張が入れば入るほど盤面の重要性が下がり、特殊タイルの確率も下がるため、競争率も下がりがちです。【南極】を取れたなら欲しい称号ですが、【エコライン】ならマップ上部で【耕作王 / Cultivator】を狙った方が良い結果が出る場合が多いように思えます。

 

【電送師 / ENERGIZER】 電力産出6以上

【トールゲート】にアドバンテージのある唯一の称号ですが、その差は微々たるものでしょう。

電力産出は電力産出を下げるカードと併用してナンボなので、この称号の為に電力産出を必死に上げるのは考えもの。レート的には電力産出+1 = 7MC 、1VP = 5MCなので、称号獲得のコストを含めて50MCで5VPではとても割に合いません。仮に《物理学総合研究所 / PHYSICS COMPLEX》があったとしても、キープ代込み65MCならレート的には4R起動して計13VPでようやくトントン。正直言って現実的ではありません。

もちろん抜け道はあって、《量子抽出器 / QUANTUM EXTRACTOR》《質量変換機 / MASS CONVERTER》があれば狙う価値はありますが、序盤で出すのは難しいため先に他の称号を取られる事が多く、概ねスルーされる称号です。

 

...というのは『コロニーズ』より前のお話。『コロニーズ』では3電力消費が交易船を飛ばすのに最も効率が良いので、電力産出+3にすることが有効な場面が多く、追加の交易船が取れれば電力産出+6にまで引き上げるメリットが出てくるため、【電送師】を無理なく取ることができます。真っ先に取得されることさえある称号になりました。

とは言え、電力カードを何枚も使って称号を取るのは考えもの。なるべく電力が+2以上上がるカードや、電力の上がるプレリュードが欲しいところです。少なくとも【トールゲート】を選ぶ理由にはなりません。

 

【外縁入植者 / RIM SETTLER】 木星タグ3以上

基本セットでは木星タグが12枚。『ヴィーナス・ネクスト』は2枚追加なのであまり比率は変わりませんが、『コロニーズ』で7枚、『プレリュード』ではワイルドタグ含めて4枚追加と、拡張を入れれば入れるほど取得しやすい称号です。理論上はプレリュードをプレイした段階で条件を満たすことすらあります。

同じタグを3枚集めるという観点からすれば一見【分散投資家】とディスシナジーですが、木星タグ自体がマイナーなため、基本的にはシナジーします。

当然ながら【サターンシステムズ / SATURN SYSTEMS】【ストームクラフト / STORMCRAFT INCORPORATED】が若干有利な称号ですが、結局のところプロジェクトカードの引き次第です。ドラフトだと木星タグを集めにくくなるので、そのメリットは相殺されるのかもしれません。

《開拓民訓練キャンプ》(以下略

『プレリュード』で木星タグを持つ《イオ研究基地》《ガリレオ衛星採掘権》は通常でも強いカードですし、特にワイルドタグの《研究ネットワーク》《共同研究》は【分散投資家】と強いシナジーがあり、【戦術家】のタグ条件カードの条件緩和にも一役買うため、より強力になります。

 

c) 褒章 / Awards

【耕作王 / Cultivator】 緑地タイル枚数

基本的には【極地探検家】とはディスシナジーで、マップ上半分で展開するプレイヤーが有利となります。

【エコライン】が最有力、他の地上戦が得意な企業も狙い目なのは言わずもがな。

 

【オートマ王 / Magnate】 ノーマルカードの枚数

拡張コミコミだと産出力を上げるアクティブガードが13/99(電力カード4枚)、イベントカードが5/53(うち発熱カード4枚)しかなく、ノーマルカードは128/165と圧倒的な割合なため【マニュテク】を使っていれば必然的にノーマルカード重視のプレイングになります。

ただし、方向性が一致してるからと言って必ずしも取れるとは限らず、結局のところコスト減少カードとドロー強化カードと産出力をバランス良く出せているプレイヤーが優位に立ちがちです。ローコストのカードでもトリガーする【マニュテク】【ヴィトール / ViTOR】【テラクター】や、序盤にMC産出の上がりやすい【ポセイドン】【アリドール】は若干有利でしょう。

プレイしたカード枚数を参照するため、【宇宙王 / Space Baron】【土建王 / Contractor】のどちらか、もしくは両方も取れることもありますが、対象範囲の広さが故にカード枚数に差の付きやすい【オートマ王】が一番安定する確率が高いです。

 

【宇宙王 / Space Baron】 宇宙タグの数

【オートマ王】同様にコスト減少カードとドロー強化カードと産出力をバランス良く出せているプレイヤーが優位に立ちがちです。カード枚数自体が他の褒章に比べて少なく、ローコストの宇宙タグカードがあまりないため、競り合いになる確率は高いです。その中でもチタン産出を増やしたり、宇宙タグを減少させるカードを複数枚出したプレイヤーが有利となります。【トリトン】が出ていればチタンフラッドになりがちで、その場合にはドロー強化で差が付きやすくなります。

約半数の宇宙カードが企業効果をトリガーする【ヴィトール】【クレディコー】や、空宙戦主体の【サターンシステムズ】【フォボログ】が若干有利です。

 

【偏心王 / Excentric】 カード上の資産数(《自己修復型ロボット / SELF-REPLICATING ROBOTS》上の資産はカウントしない)

1ラウンドに1つ乗せるアクションカードよりも、トリガーして載る方が増えやすいです。受け皿 (資源を載せるカード) として最も確実性が高いのは序盤の《愛玩動物》で、爆発力が高いのは《金星動物 / VENUSIAN ANIMALS》でしょうし、《生態ゾーン / ECOLOGICAL ZONE》《火星動物園 / MARTIAN ZOO》も悪くないです。

それ以上に浮遊体や微生物が数を稼ぎやすいものの、受け皿となるカードはあまり多くありません。企業自体が受け皿となる【セレスティック / CELESTIC】が基本的には有利な称号です。

惑星【エンケラドゥス】【タイタン】【ミランダ / MIRANDA】が出ているとこれらのカードを活用し易くなるため、競合することもままあります。一応《オリンポス会議 / OLYMPUS CONFERENCE》上の資源もカウントしますが、影響が出ることは稀でしょう。

 

【土建王 / Contractor】 建物タグの数

【オートマ王】同様にコスト減少カードとドロー強化カードと産出力をバランス良く出せているプレイヤーが優位に立ちがちです。

タグ数自体は多いので競り合う確率は【オートマ王】と【宇宙王】の中間あたり。建設タグのカードは都市カードを含めても点数に絡むカードが少なめなので、惑星【ケレス】が出ていて建材フラッドでない限り、競り合うと点数にならないカードの応酬で不毛な争いなることもしばしば。

建材フラッドになりがちな【採掘ギルド】が結果的に取りやすい称号ですが、建物タグのコストが下がる【城星マーズ】や、建物タグは産出カードが多いため【マニュテク】も比較的狙いやすい称号です。

 

3) エリシウムボード

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a) 概要

真っ先に目につくのがオリンポス山の3ドロー。レート的には3ドロー = 9MC なので、南極の 16-6 =10MC と比べても遜色ありません。ただ、南極とは違って隣接して2箇所しか緑地を配置できないため(例外はあります)、都市を配置すると結果的に損をすることもしばしば。

逆に中央の植物3は地上戦を優位に戦える上に2つの称号を両睨みできるので、都市を置くならまずココになるでしょう。燃やされないのが前提ですけども。

称号は【専門家 / SPECIALIST】を除けば揃うのに時間が掛かりがちで、褒章は地上戦を挑むプレイヤーが先ず【絶景王 / Estate Dealer】を獲得する傾向にあります。

 

b) 称号 / MILESTONES

【万能家 / SPECIALIST】 全種類の産出量+1以上増加

MC産出はほぼ上がるでしょうし、電力産出も標準プロジェクトで可能です。発熱産出はできれば気温上昇のオマケとして取りたいところ。基本セットではチタンがネックで、拡張コミコミでは植物と建材がネックになりがちです。

最も適正のある企業はこの称号の為に作られたかのような【ロビンスン産業 / ROBINSON INDUSTRIES】で、プレリュードの《金属企業 / METALS COMPANY》《社会支援 / SOCIETY SUPPORT》は3種類の産出が上がるため重宝します。プロジェクトカードも2種類の産出を上げるカードが有効...と言いたい所ですが、《産業用バクテリア / INDUSTRIAL MICROBES》《月光収束システム / LUNAR BEAM》辺りがコスト的に現実的なラインでしょうか。

 

【専門家 / SPECIALIST】 いずれかの産出量+10以上

理論上は他の産出もあり得ますが、現実的にはMC産出+10以上とほぼ同じ。

プレリュードだけで達成される可能性すらあり、1~2ラウンドの獲得も珍しくありません。概ね最初に取得される称号でしょう。それが故に競争率が全称号中で最も高く、モラトリアム (moratorium 猶予期間) はほぼありません。狙う際には条件を達成した直後に獲得できるよう準備すべきでしょう。

基本的には初手次第ですが、惑星【月 / LUNA】がある場合には実質ハードルが下がるため、さらに競争が激化します。

基本セットなら序盤にMC産出が上がりやすい【タルシス】、拡張コミコミなら【ポセイドン】【アリドール】、スタートからMC産出のある【城星マーズ】【ポリュペモス】は若干有利です。

 

生態学者 / ECOLOGIST】 植物、微生物、動物タグ数4以上

序盤に出てくる動物タグカードは《愛玩動物》のみ (《火星動物園》はあり得ます)、ワイルドタグは2枚しかないので、概ね植物と微生物が対象となります。とは言え序盤に出せる植物・微生物カードならともかく、出したいカードは少ないため、獲得時期は遅れがち。

ハードルが高いので、該当タグを持つ【エコライン】【アフロディーテ】【ヴァイロン / VIRON】は企業戦術とも重なるため有利です。序盤で有効な微生物カードは《極寒菌 / EXTREME-COLD FUNGUS》《脱窒菌 / NITRITE REDUCING BACTERIA》《低温菌》《産業用バクテリア》や、科学タグのある《設計された微細生命体》《ウイルス エンハンサ / VIRAL ENHANCERS》といった辺り。植物タグだと《極地の藻類 / ARCTIC ALGAE》《ノクティス開墾 / NOCTIS FARMING》《保全指定渓谷 / PROTECTED VALLEY》は有効ですが、それ以外は称号を取る為だけのカードとなりがちです。

 

【大立者 / TYCOON】 緑と青のカードの合計15枚以上

条件自体は緩いものの早期獲得は難しいため、概ね3つ目の称号として中盤に獲得されます。多人数プレイだと他の称号を取られる事の方が多いでしょう。

コスト減少カードとドロー強化カードと産出力をバランス良く出せているプレイヤーが優位に立ちがちです。最終的なカード枚数は多くなる傾向があるものの、エンジンの掛かりが遅い【マニュテク】【ヴィトール】よりは、初期MCが多い【テラクター】【クレディコー】やMC産出の上がりやすい【ポセイドン】【アリドール】が比較的有利でしょう。

 

【伝説 / LEGEND】 イベントカード5枚以上

構造上は条件カードが相反するため【大立者】とディスシナジー

一見【IC】が有利に見えますが、産出力を上げるイベントカードはTR上昇カードがほとんどで、《委員会買収 / BRIBED COMMITTEE》以外だと得点も付いてる分、序盤で打つには割高ですし、建物タグをキープするために少ないMCが削られるので、個人的にはむしろ獲りにくい企業だと考えます。建物タグが少なければイベントカードを使う余裕は出ますが、そうなると【IC】の最大の特長である初期建材20を活かしきれません。イベントカードの約半分が宇宙タグを持つため、まだ【フォボログ】の方が向いているとさえ思えます。

結局のところコスト減少カードとドロー強化カードと産出力をバランス良く出せているプレイヤーが優位に立ちがちなので、方向性としては【大立者】と似ていて、有利な企業は概ね同じですし、多人数プレイだと取得されにくいのも同様。

とは言え多少は違いもあり、《鉱物堆積層 / MINERAL DEPOSIT》《投資ローン / INVESTMENT LOAN》といった一時的に資産を増やすカードや、《委員会買収》《洪水 / FLOODING》《契約労働者 / INDENTURED WORKERS》《徴集 / CONSCRIPTION》といったマイナス点の代わりにコストが安いカードはさらに効果的になりますし、本来なら有効な産出カードが無くなってから打ちたいドロー強化カードの優先順位は上がります。《惑星間植民船 / INTERPLANETARY COLONY SHIP》は元々引いたらすぐ打つカードですし、《雇われ襲撃者》《サボタージュ》はおろか、1枚くらいなら称号獲得のための空打ち (効果を発揮しないカードを出すこと)  も選択肢として入ってきます。

イベントカードでトリガーする《メディア グループ / MEDIA GROUP》《最適化された空力ブレーキ / OPTIMAL AEROBRAKING》は効果的。どちらかが初手にあり、トリガーを引くカードがあれば【IC】が最有力になるかもしれません。

 

c) 褒章 / Awards

【浪費王 / Celebrity】 20MC以上のカード枚数

カードを参照する褒章の例に漏れず、結局のところコスト減少カードとドロー強化カードと産出力をバランス良く出せているプレイヤーが優位に立ちがちです。ただ、コスト減少カードは低コストカードを連打した方が効率が高まるため、他の褒章よりは効果薄めです。企業効果とシンクロする【クレディコー】が最有力ですが、なまじ汎用性が高く標準プロジェクトからの地上戦でも戦えるため、意識しないと1枚も該当カードをプレイしていない、という事もあり得ます。

割合的には拡張コミコミだと木星タグが13/23と最も高く、宇宙タグが25/51とそれに次ぐ(重複は11枚)ため、空宙戦主体の企業が導かれやすいでしょう。企業的には【サターンシステムズ】【フォボログ】という事になるでしょう。

 

【産業王 / Indusrialist】 建材と電力の残り資源量

ストックできるのが建材だけな上、電力産出は電力産出を下げるカードと併用してナンボで、電力を消費するカードは《火星鉄道 / MARTIAN RAILS》《開発センター / DEVELOPMENT CENTER》以外あまり実用的でないため、《量子抽出器》《質量変換機》《省エネルギー対策 / ENERGY SAVING》を除けば概ね建材のストックがモノを言う褒章です。基本的には【採掘王】同様【採掘ギルド】が狙う称号でしょう。

 

...というのは『コロニーズ』より前のお話。『コロニーズ』では3電力消費が交易船を飛ばすのに最も効率が良いので電力産出が無い状況の方が少ないですし、効率の良い電力カードとして《コロナ抽出システム / CORONA EXTRACTOR》が増えたため、電力産出+10以上になることもあります。また、惑星【ケレス】が出ていると建材フラッドになり易く、この場合は産出力があまり伸びていないプレイヤーにも獲得の目があります。

 

【砂漠王 / Desert Settler】 下4列のタイル数

【絶景王】とは基本的にディスシナジーで、植物がほとんど拾えないため植物産出を伸ばして緑地を配置するよりは、金にモノを言わせた方が取得し易いかもしれません。理論上は【人工湖 / ARTIFICIAL LAKE】があれば両獲りも可能ですが、まだお目にかかった事はありません。

 

 【絶景王 / Estate Dealer】 海洋に隣接したタイル数

海洋隣接を含め配置ボーナスが多くなるため、序盤にタイルが該当地域に置かれやすいです。見込みが立ちやすいが故に早期に獲得され易く、競合も頻繁に起こります。どれだけタイルを置けるかに加えて、いかに他人に置かれないようにするかも重要となり、どこに海洋配置するかが決め手にもなり得ます。最もスキルが要求される盤面褒章と言えるでしょう。

【砂漠王】【絶景王】共に地上戦主体の企業が有利です。

 

【支援王 / Benefactor】 TR値

※ゲーム終了時、最初にこの称号の得点計算をします。

グローバルパラメーターを上げて早期決着を狙う【UNMI】が取らなければならない称号です。一発逆転の可能性を秘める《テラフォーミング・ガニメデ / TERRAFORMING GANYMEDE》は早期決着できれば恐れるに足りませんし、3つ目の褒章が獲得されないまま終わることもあります。早期決着と【支援王】を取れるTRが無ければどのみち【UNMI】に勝ち目はほぼありません。

それ以外では概ね植物産出や発熱産出を伸ばしているプレイヤーが有利となります。

理論上はTR上昇エンジンも有効ですが、単独では《帯水層くみ上げ / AQUIFER PUMPING》のような効率の悪いカードが多くてイマイチ。《極寒菌》等のコンボか、惑星【エンケラドゥス】【タイタン】を活用するなどの工夫があれば現実的になります。

『コロニーズ』入りだと最終ラウンドに電力産出が余るため、僅差だと《地場発生装置 / MAGNETIC FIELD GENERATORS》などでひっくり返されることも。

もちろん長期戦になれば《テラフォーミング・ガニメデ》が威力を発揮します。