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機上の九龍

kowloon on aeroplane

空論 グラスロード (1) 分析にあたって

1) はじめに

"A game is a form of art in which participants, termed players, make decisions in order to manage resources through game tokens in the pursuit of a goal."

ゲームとは、芸術の一形態であり、プレーヤーと呼ばれる参加者が目標達成を目指して、ゲームトークンを介して資源管理のため意志決定するものである。

I Have No Words & I Must Design / コスティキャンのゲーム論 

ゲームデザイナーのコスティキャンRPG雑誌『Interactive Fantasy』の記事で「ゲーム」についてこう定義付けました。個人的には「目標達成(goal)」「資源管理(resource management)」「意思決定(decision)」がゲームに必要だという意見に賛同します。まぁ「資源管理」自体に「意思決定」が内在するので、「資源」と「管理」に分けた方が良いのかもしれません。

何にせよ、ゲームを分析する際にもこの視点が必要になってくると思います。『グラスロード』の目的は最も得点を取ることです。なので次の記事では得点と最も密接に関係するボーナス建物の分析をして、次に資源管理と関連する加工建物、即時建物、専門家と続き、その後資源そのものについて触れ、最後に上手く纏められればなぁと考えています。

 

2) グラスロードのメカニクス

BGGの"Glass Road"のページでは Card Drafting / Set Collection / Simultaneous Action Selection / Tile Placement / Variable Phase Order と分類されています。15人の専門家から5人選ぶのが「ドラフティング」で、得点を得るために何かを組み合わせる所が「セットコレクション」なんですかね?

そして「アクション選択」「タイル配置」「アクションの順番が入れ替わる」ってな感じでしょうか。

ボードゲームのメカニクス - 部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女 基準でいくと「同時決定」「タイル配置」「バッティング」「セットコレクション」という事になります。

 

個人的に『グラスロード』は『ラ・グランハ』とは違って分かりにくいゲームだと思ってます。ゲーム慣れしてる人間ならともかく、初めてプレイした時にこのゲームをどうプレイしていいかが感覚的に掴みにくいんじゃないかと。一番点数を取った人が勝ちという事はすぐ分かっても、「じゃぁどうやって点数取るの?」という所に結びつきにくいんですよね。特にガラス/珪砂/レンガが得点になることや、『グラスロード』という名前からしてガラスをたくさん作ったら勝ちだと誤解されやすいです。

なので、私が説明する際には (大抵はルパンさんかイナさんが説明するのでその機会はほぼありませんが) 「『グラスロード』と呼ばれる地域の森を開拓し、資源を集めて建物を建設し、その建物を有効に使って地域を最も発展させたプレイヤーの勝ち」という説明をしています。これだけでは説明として不十分ですが、建物を建設するには空白エリアと資源が必要になり、ボーナス得点を得るにはその建物に合った資源や地形が必要だ...要するに前提条件が何かをイメージを絡めて含めているつもりです。建物を建設するには資源が必要だというのは誰でも分かりますが、その他の前提条件についてはルールを見てもパッと思いつかない点が、このゲームのわかりにくさ...いわゆる「見通しの悪さ」に繋がっていると考えています。

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"Glass Road " Game Instructions p7

さらに初心者に厳しいのが、見た目的にはこのゲーム最大の特徴である生産ホイールで、「何か凄いけどよく分からん」となりがちです。このため初心者には何が目的か分からず、手段である資源もホイールの動きに翻弄され、専門家の効果もよく飲み込めないままゲームが終わってしまうという状況になりかねません。まぁぶっちゃけ生産ホイールに関しては何度か使って慣れて貰うしかないんで、インストしている最中にもひたすら口で説明するのではなく、実際にホイールを動かしてもらって、どういう動きをするのかを体験してもらった方が良いのかもしれません。

とまぁ正直言って『グラスロード』は初心者にとって優しくないゲームですが、鬱蒼とした森を切り拓けば光り輝く世界が待っているかもしれません。

あくまでこの分析は個人的に考えを纏めるのが目的ですし、本来なら分析はプレイヤー自身が考えるものだと考えています。ただ、自分の引き出しにない発想を自力で考えつくのは相当難しいですし、『グラスロード』がどういうゲームかという (あくまで「私の『グラスロード』の見方」ですが) ことが分かればそこで興味を持ってくれる人もいるでしょう。たぶん。ゲーマーならデータだけ見て自分で考えて下さいw

 

で、初心者に厳しい代わりに『グラスロード』がゲーマーに好評かと言われるとそうでもなく。BGGのボードゲームランキングでは171位とむしろ高い方なのですが、ウヴェ・ローゼンベルグが作者のゲーム『アグリコラ / Agricola』『カヴェルナ / Caverna』『ル・アーブル / Le Harve』『パッチワーク / Patchwork』『祈り、働け / Ora et Labora』がそれぞれ4,7,16,47,54位なのと比べると相当落ちます。

あくまで個人的見解ですが、『グラスロード』があまり評価されない原因のひとつがバッティングシステムではないかと。カツカツとしたリソース管理を楽しみたいのにパーティ的なバッティングシステムなんぞ要らんのじゃ!という感じなんでしょうきっと。確かにそういう意味では相性が悪いかもしれません。

バッティングのメカニクス自体は、最終的には腹の探りあいになり、答えは見つからない(見つかっては面白くない)ので、このメカニクスだけではゲームは単調になる。また、戦略性を高めようとすると「答え」が見つかってしまったりするので、その辺のデザイン上のジレンマがあるかもしれない。バッティングをメインで採用するのなら、いっそシンプルなパーティーゲームに留めておくのが無難なのかもしれない。

ボードゲームメカニクス - 部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女

 とは言え、バッティング...というより、カードを15枚から5枚選ぶシステムには素晴らしいメリットがあります。これ自体はドラフティングとは言い難いですが、メリットとしてはドラフティングと同じ「同時決定」のメリットです。

手番制の「ダウンタイム」という問題を解決する為に、手番制ではなく全員同時に行動を行うようにするメカニクス。意思決定の早さによる有利不利の問題がある為、このメカニクスを採用するゲームでは、その問題を解決するような仕組みを導入していることが多い。例えば「魔法にかかったみたい」のようなバッティングゲームでは、全員が「秘密裏に」カードを選び、全員が選び終わったら順番に、または一斉に開示する、というようになっている。
(中略)
同時決定の最大のメリットは、テンポがよくなることである。人数が増えてもプレイ時間が大きく変わらない為、大人数のゲームにも向いている。反面、うまく考慮しないとソロプレイ的になりやすい。

ボードゲームメカニクス - 部屋とボードゲームと私と酒と泪と男と女

ダウンタイム解消の方法は2つあります。1つは長考 (≒Analysis Paralysis) 自体を減らすために選択肢を減らすことですが、ゲームの楽しみの一つが何を選択するのか悩むことなので、この解決方法ではゲーム自体の楽しみを削ることにもなりかねません。そこでもう1つの解決方法は長考は維持しつつ、待ち時間を減らす「同時決定」となります。そして、「同時決定」のソロプレイ的になりやすい欠点を解消するのが「バッティング」です。「バッティング」されるデメリットに加え、「バッティング」するメリットがある『グラスロード』では、アクション数を増やそうとすれば他人の動向を気にする必要が出てきます。

専門家がマストフォローな点は選択肢を減らすことにも繋がっていますが、専門家を出す順番を完全に決められないという意味ではパターンを絞れないことを意味します。そして専門家を出す時にはどちらのアクションを使うか、もしくはどちらのアクションを先に使うかしか選択肢はありません。これは予め出る順番が逆になった場合を考える必要がある...それを「同時決定」の段階で決めることになるので、パターンを減らさずにダウンタイムも伸ばさず、考える時間は増えるといった効果がでてきます。

唯一建設の際には長考する場合がある...特に【建築士】をダブルアクションで出来る時にはそうなりがちですが、使える資源に限りがあるのである程度は抑えられていると思います。

そして生産ホイールも、資源の変動に掛かる時間を劇的に減らしてくれます。誰かが銀行役をする必要もありません。これも密かに待ち時間軽減に役立っています。

さすがに人数×20分のプレイ時間ってのは少なすぎますが、自分のやってる範囲だと概ね人数×25分ってのが妥当なラインです。長考するにも関わらずダウンタイムは短いのがこのゲーム最大の長所であり、他のウヴェのゲームには無い点だと考えます。

 

3) 余談

あと、このゲーム2人でやると割と別ゲーです。『カルカソンヌ / Carcassonne』同様、よりシビアな2人用のほうが面白いと言う人もいそうです。実際BGGではベスト2人となっていますし。そして、ある種の虚しさがあるのはソロゲーに共通する事なので仕方ないですけど、1人用でも考える要素が多くて意外と面白かったりします。