機上の九龍

The kowloon on an aeroplane

空論 グラスロード (4) 即時建物

1) 即時建物の特徴

Uwe: “Immediate buildings are much like the Specialist cards: You pay something to get something else.

After that it does not influence any of your decisions anymore. You can build them in the early game as well as in the end game.”

ウヴェ:即時建物は専門家カードに似ています。あなたは何かを得るために別の何かを支払うのです。そのあと、それはもうあなたの意思決定に何の影響を与えません。あなたは即時建物をゲーム序盤に建設することも、ゲーム終盤に建設することもできます。

"Glass Road " Game Instructions p17

即時建物は加工建物と同様に、基本的には資源を変換する建物です。違いはその後いつでも能力を起動できるか、建てた時に起動するかだけです。そういう意味ではむしろ専門家に似ていますが、即時建物は建設スペースが必要な分、一部を除いてオマケの得点が付いてきます。1度しか効果を使えないためか必要資源2以下の建物が3分の1を占め、その中には木、粘土、ガラス、レンガ以外の資源をコストにする建物が5つあり、予定が狂って狙っていた建物を建設できなかった時には特に有り難みを感じるでしょう。爆発力を秘める代わりに変換を何度もしないと元が取れない加工建物とは違い、建てるだけで元が取れるものが多く、後半になっても活躍しますし、大抵は専門家を雇って資源変換するより効率的です。残りの半分はかなり使う状況が限定される建物でしょう。

 

2) 即時建物の分布

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即時建物のコスト/効果はこのようになってます。

即時建物は主に「資源変換」「地形関連」「その他」へと分類できます。ここでは便宜上「資源変換」を「単純変換」「参照変換」「置換」に、「地形関連」を「コスト:地形」「地形参照」「地形増加」へと細分化します。

 

3) 即時建物 / 単純変換

31ある即時建物のうち、35%の11建物がこれに該当します。 f:id:GRGR_BG:20160206142558g:plain

効果で分類すると「1種類の資源を7にする」「ほぼノーコストで資源を3増やす」「加工資源を直接増やす」「ある資源を3+3増やす」の4種類になり、概ね資源の増加する割合が少ない建物は代わりに得点が入るようになっています。何かの資源が欲しい時に建てると、大抵は資源変換系の専門家よりいい仕事をしてくれます。特に【建築士】がダブルアクション出来た時には重宝します。

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【粘土の湖】は資源量だけ見れば【粘土運び人】ダブルアクションの約2倍の効果。それを建設のアクション1回で出来るのですから弱い筈がありません。ただし空きスペースというコストも支払っている事をお忘れなく。

【大工の作業場】は基礎資源換算でみると7資源使って7資源を得るので増減なしですが、資源が減らないのに2点増えることや、粘土は作りやすいけど木が足らない傾向にある採掘坑戦術にとっては非常に有り難みのある建物でしょう。木を原料にする加工建物があれば、さらに資源を増やせつつ資源が溢れる可能性も下がるため特に有効です。

【レンガ倉庫】はレンガに3種類の資源が必要なところを2種類で済むところ、基礎資源換算で4から6へと増えること、ついでに1点入ることだけでも十分優秀ですが、最後の得点行動として4資源3点になる動きが強く、割と競争率が高いです。逆に【建築士の倉庫】は資源が増えるもののレンガを使って0点と、最後に使えばマイナス得点行動になるので若干注意が必要です。

 

4) 即時建物 / 参照変換

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【丸太流し場】【温泉】【彫刻工房】が該当します。

【丸太流し場】【温泉】は水を参照するので、池戦術や水を生産できる加工建物があれば使えますが、意外とそういう状況は多くありません。 【丸太流し場】は上手くいけば資源は増えますし、【桶屋】と相性が良いのでまだ使い易いです。

【温泉】は基礎資源換算で12も使うので資源は確実に減り、かなり使いづらいです。とは言え木炭を水に加工する【湯治場】とは相性が良いですし、木炭7増やせれば差し引き5資源で4点と超優良建物になります。

【彫刻工房】は比較的資源を増やしやすい木を参照する分、前提条件はいくらか緩和されますが、

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2木3粘土で2点入り、確実に7食料入る【穀物庫】と比べるとどうしても見劣りします。

参照変換建物は使えないとまでは言わないものの、非常に扱いづらい建物だと個人的には考えます。単純変換だと建設コストがあり、生産される資源が欲しい場合に取る価値がありますが、参照変換だとさらに参照する資源がふんだんにあるという条件が追加されるのですから。逆に言えば他のプレイヤーから狙われにくいので、計画通りに建て易いのはメリット。よく勘違いされますが参照資源自体は減りません。減るのは建設コストだけです。

 

5) 即時建物 / 置換

置換建物はパネルの左側が木ではなくレンガになっています。

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【森の小屋】【芸術家の集落】【組合会館】が該当します。それぞれ初期建物の【ガラス職人の集落】【森のガラス工房】【石工組合】を置き換えるため、最後にガラス/珪砂/レンガを残しても点数が入らないのが最大のデメリット。さらには【森の小屋】【組合会館】だと資源はむしろ減りますが、代わりに点数は1,2点増えますし、増える資源も粘土/木と大量に消費する資源。最後にガラスやレンガが残らなければデメリットも帳消しになります。建設スペースが不要なのもメリットです(ただし建設する際には最低空きスペース1つが必要。マニュアル9p参照)。

【芸術家の集落】は食料が建設コストになる唯一の建物で、1資源でガラス1とコストパフォーマンスは高く、さらに何故か1点付いています。ガラス自体が1点にもなるので、コスト1で2点入ることもあるでしょう。

一応、それぞれ【ガラス工場】【ガラス職人の村】【石工ギルド】への置換も出来なくなるのもデメリットですが、そもそもこれらの建物を建設した段階でその道は諦めてる筈...ですよね?

 

6) 即時建物 / コスト:地形

【ワイン醸造所】【漁場】【造園事務所】が該当します。似たような効果がある建物に加工建物の【養樹園】 【農場】【工務店】があります。

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地形1枚辺り資源4増えるとみると加工建物に比べて変換効率は高いですが、即時建物なのにも関わらず建設コストが高く、【漁場】は2回で元は取れますが、【ワイン醸造所】【造園事務所】は3回変換してもトントンか少し足りません。なのにも関わらず変換効率は高いが故に変換回数を5回以上にすると資源が(ホイールが自動的に回らない限り)溢れるといった所にデメリットがあり、変換される資源も同じ地形を参照する専門家と被るなど、使い勝手自体は正直悪いです。

ただし変換する資源を参照するボーナス建物、例えば【ワイン醸造所】【漁場】を使う時に【倉庫】があれば話は別ですし、基礎資源換算で資源量が減ったとしても、その分を得点に変換したと考えればかなり得点効率は高いです。そもそも【ワイン醸造所】の能力を起動しなかった場合でも12資源で4得点なので、1資源あたり0.33点とそれだけで水準以上です。【ワイン醸造所】【漁場】には食料をストッパーにした後、一気に食料を増やしてガラスやレンガを大量生産するといった事も可能で、ハマった時には5~6点稼いでくれますし、【造園事務所】も払った粘土を元に戻しつつ珪砂で3点追加で稼ぐ、といった動きをすると強いです。

 

7) 即時建物 / 地形参照

隣接する池を参照する【黄土の島】【砂の島】と、池の数を参照する【船小屋】、隣接する空地を参照する【粘土倉庫】【材木倉庫】の5つが該当します。コストが安い、資源が増える、何故か得点も入ると即時建物にありがちなメリットを全て網羅していますが、地形という条件が付くため若干使いにくさもあります。

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【黄土の島】【砂の島】は池が必要で、かつ建設コストも池から産出される資源なので、池戦術だと比較的使い易い建物です。逆に言えばそれ以外の戦術だとほぼ使いません。

建設コストが基礎資源換算で2,1なので、最低でも隣接2、できれば隣接3で使いたいところですが、

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森を開拓しない場合だと池隣接3~4で置ける場所は1箇所しかなく、 どのみち池を1~2枚置いてからの話になるので、使うなら概ね2~3ターン目ということになるでしょう。【黄土の島】は池戦術で比較的作りやすい珪砂をコストに、不足しがちな粘土が出るのでハマった時には有り難みを感じるでしょうし、【砂の島】は建物で1点、増えた珪砂で3点入ればそれだけで4点行動になります。

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【船小屋】は場所によらない分どこに池を置くかを考慮せずに済みますが、建設コストが池から産出されない資源を3払っているのである程度池の数が多くないと資源量的には割に合いません。どちらにせよこれら3つの建物は池戦術でも使い方が難しい建物ではあるものの、【貯水塔】との相性は良いです。

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【材木倉庫】【粘土倉庫】は参照するのが空地なので、地形参照の即時建物の中ではかなり使い勝手は良いです。森を開拓してれば隣接2は余裕、3も十分可能な上、得られる資源が重要資源の木/粘土なのですから。

地形参照の即時建物の最大の特徴はちゃっかり得点が入ることで、【粘土倉庫】は資源4、【船小屋】に至っては資源3しか掛からないのに2点付いてくるので、意外と得点効率は高いです。【砂の島】はコストが水1で1点入る上に珪砂が得点になるので、2~3点は期待できます。

 

8) 即時建物 / 地形増加

【小森の邸宅】【貯水塔】【黄土の台地】【別荘】が該当します。

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地形タイルを置く行為は即時発動ですが、地形タイル自体は残り続けるからか、建設コストが高めに設定されています。 地形を参照する専門家と非常に相性が良く、その中でも【貯水塔】は最も爆発力を秘めます。3枚池を置いた後に【池造成者】を出せば水か珪砂が+3されますし、池なら【養魚家】も参照するのでさらにメリットが。

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ボーナス建物も【浴場】なら隣接2つを1手で賄えますし、きちんと繋げられれば【水門】とも相性が良く、ボーナス建物が無くても【黄土の島】【砂の島】【船小屋】や池を加工する建物があれば無駄にならないと、良いことずくめ。

ネックとなるのは爆発力が高いが故の高コストと、この建物だけでは土地が増えるだけで基礎資源は増えないこと、場所を広くとる必要があるので予め森を開拓しておく必要があることでしょうか。得点はそれなりに付いてきます。

【黄土の台地】はこの例外で、ノーコスト-1点。点数マイナスの分は後で珪砂を作れば元は取れるでしょう。

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【別荘】は置ける地形は最大2枚なものの、どの地形戦略でも使える柔軟性があります。バッティング目的で誰かと同じ地形を伸ばすもよし、バッティングを避けるために他の人が伸ばしていない地形を伸ばすのも良し。別々の地形を2枚置けるのではなく、同じ種類の地形を2枚置きます。

 

9) 即時建物 / その他

【材木商】【酒場】が該当します。

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【材木商】は木を他の基礎資源2に何度も変換可能と、見た目はかなり高性能ですが、実は単独で使うと結構な罠です。即時建物は建設コストを払って即能力起動なので加工建物を使って木を増やすタイミングが無く、建設コストで1木使うので変換に使える木は最大6つ、しかもガラスやレンガを生成するタイミングだけは割って入るので、ガラス1作るごとに変換可能な木は1減ります。建設コストに基礎資源6つ使っているので、資源量自体は最大変換でもイーブンです。もちろん木以外のどの基礎資源を原料にする加工建物ともチェーンしますし、どの資源を参照するボーナス建物ともコンボする柔軟性はあるので、そういった場合には十分効果を期待できます。余った木を珪砂にして得点に変換できるのも魅力。

【酒場】は建設コストが木1粘土1と非常に軽く、【材木商】のように効果は高いものの建設コストと折り合わない即時建物をコピーすることによって、より効果的に使うことができます。とは言え「置換建物」はコピーできませんし、「コスト:地形」は既に地形を消費してるでしょうから再利用は難しく、「地形参照」も空地は使えますが池参照はまず使えません。そもそも即時建物が無ければ「何もしない」建物なので、使える条件がかなり限られます。

 

10) まとめ 

即時建物を7種類に分けて考察してみましたが、使用感からすれば「低コスト資源増建物」「高コスト土地増減建物」「ニッチ建物」に3分割できるでしょう。「高コスト土地増減建物」は地形戦術で威力を発揮しますし、「ニッチ建物」は使い勝手が悪い分、建てる計算がし易い点がプレイ人数が多いほどメリットになります。そして「低コスト資源増建物」は建てると単独でも資源が増えるという他の建物には無い特徴があり、消極的に行けば目的の建物が取れなかった場合の保険に、積極的に行けば建築士】のダブルアクションで建設しまくってるにも関わらず資源が増えるという意味不明の状況さえ作れます。

ゲームの勝敗に直接関与するボーナス建物や、方針を決めやすくなる加工建物よりは重要度が下がるかもしれませんが、資源を減らさず建てられれば資源枯渇の息切れ防止しつつ点数の底上げをしてくれます。使い方は難しいので、まずは試してみることを薦めます。