機上の九龍

The kowloon on an aeroplane

空論 グラスロード (5) 専門家

専門家に関しては別の方が考察しているので、そちらも参考に。

グラスロード考察・人物カード --- ばたやん 

 

1) 専門家の特徴

 Uwe: “This is what this game is about: Choose cards that you think no other player will choose to use them more effectively, but also choose some that you think will be played by other players to benefit from that as well.”

ウヴェ:つまり、このゲームはこういうゲームです--より効果的に使うために、他の誰も選ばないと思ったカードを選びましょう。しかし同時に、他プレイヤーがプレイすると思ったカードも選び、それらのカードからも利益を得ることにしましょう。

"Glass Road " Game Instructions p5

『グラスロード』においてインタラクション (=相互作用。ボードゲームではプレイヤー間で影響を与え合う効果のこと) の大半を占めるのが専門家を使う時のバッティングシステムです (他は早い者勝ちの建設と【納入業者】) 。

似たようなシステムの『魔法にかかったみたい / Wie verhext!』『ブルームサービス / Broom Service』と同様のプロット (=計画) 方式で、事前にそのラウンドに使う専門家を決め、自分がキープしている専門家を他の人が先に出したら、自分も出さなければならない (=マストフォロー) ため、自分が計画した順番で専門家を出せるとは限らない点が要注意です。例えば食料0の状態から【養魚家】で食料を増やした後【建築士】を出そうと計画しても、その前にバッティングで出てしまい、【建築士】のコストが払えないという状況は十分あり得ます。予め専門家を出す順番が入れ替わってもきちんと機能するかを考えていれば、このリスクを減らせます。

説明書では手番順が先であるメリットとして先に建設できることのみが挙げられてますが、例えば初手で【養魚家】をセットすれば、その後【建築士】のコストはほぼ確実に払えるようになる...手番が先であるほど1手目の計画が狂いにくく、1番手では最初に望んだアクションが出来るのもメリットです。

先の二つのゲームと違う点は、他のプレイヤーが選ばないカードがあればあるほど良い訳ではないところです。理想はバッティングしないカードを3枚自分で出し、合わせるカードを2枚仕込む事ですが、自分が出したカードは全てバッティングし、1枚も合わせられないという状況はままあります。プレイヤーによって専門家の好みが分かれるため、プレイする相手が変われば戦術も変わるところもこのゲームの面白さでしょう。

 

2) 専門家の分布 f:id:GRGR_BG:20160116174923g:plain

専門家のコスト/効果はこのようになっています。

コスト面では「森1」「資源1」「ノーコスト」の3種類。

効果面では「資源が一定数増える」「資源が地形/手札の数だけ増える」「地形を増やす」「建設」「その他」に分類されます。各専門家の分析をした後、コスト面分類別の分析をすることにします。

 

3) 【木こり】

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コスト:森1,効果:木2:木2

基礎資源の中で最も重要な木を4獲得できるやり手。後半になれば【森林管理人】がそれ以上の木を生産できる可能性があり、どちらかと言えば序盤向き。その割には1R目はレンガを作るための木炭が重視される上、木は初期資源が4あるため、意外と出てきません。

 

4) 【焼き畑農家】

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コスト:森1,効果:木炭2:食料2

1R目レンガを作るため木炭を生産する3つの選択肢のうちの一つ。序盤は特に建設スペースに余裕が無いので、その中でも最も出てくる確率が高い印象。木炭と食料の両方がストッパーになる事がままあり、特にレンガは木炭と食料と粘土だけで作れるため、終盤でも意外と役に立ちます。

 

5) 【大工】

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コスト:森1,効果:木1:建設

木1のアクションは全専門家中最低の効果。だから【大工】は弱いのではなく、むしろ木2だと強すぎるので調整されたと見るべきです。他の専門家だと建設に必要な空きスペースを作るために1手、建設で1手掛かるところをこの専門家は1人で出来る、しかもバッティングされようがされまいが。ボード中央部分は地形の関係上、割と残しておきたい場合があり、そういう時にはさらに輝きます。ダブルアクション出来ても旨味は少ないので誰かが出した時にバッティングで出したい専門家ですが、加工や即時建物の建設スペースを確保してから建て、その資源を使って何かをしようと考えると、自分から出さざるを得ない場合もあるでしょう。他の建設可能などの専門家にも言える事ですが、他のプレイヤーが同じ建物を狙ってる場合にも自分から出さざるを得ません。

 

6) コスト:森1 専門家まとめ

Entire tracts of land were deforested for glass -- much to the satisfaction of the feudal lords whose lands could thus be improved with infrastructure.
Due to the progressing deforestation, Forest glass ceased to exist in the 19th century.

地域一帯の木々がガラスのために切り払われました--この過程でインフラを整備することができたため、その地域の領主は非常に喜びました。しかし森林破壊が進んだため、森のガラスは19世紀には消滅しました。

"Glass Road " Game Instructions p1

【木こり】【焼き畑農家】が森を資源に変換するため、森も資源だと見做されがちですが、このゲームにおいては森を焼き払った後のスペースの方が重要です。林/池/採掘坑はいつでもリムーブできますが、森はできません。 (建物もリムーブできません) 『グラスロード』と同じくウヴェ・ローゼンベルグのゲーム『祈り、働け / Ora et Labora』でも森や泥炭は自由にリムーブできず、リムーブすれば建設スペースが広がりますが、それ以上盤面を広げようとすれば1手と最低3金が必要になります。1手と資源が必要なくらい空きスペースってのは重要な訳です。

なので森が資源と見做すよりは、森をリムーブした後のスペースこそが資源であると見做した方がこのゲームにおいては適切でしょう。それが故に加工建物の森をコストにする建物が強いという事にもなります。

森をコストにしている段階でメリットが生じてるので、基本的にバッティングで出した方が良いです。【木こり】【焼き畑農家】でダブルアクション出来たとしても、シングルアクションから資源が+2しかされませんし、【大工】に至っては+1です。ただし、食料と木炭両方欲しい時の【焼き畑農家】だけは別です。

 

7) 【炭焼き】

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コスト:木1,効果:木炭3:木炭3

1R目レンガを作るため木炭を生産する3つの選択肢のうちの一つ。地形や手番に左右されないことと、どちらのホイールの木炭を増やすかといった選択肢があること、特に木炭が両方のストッパーになっている時には重宝します。さらに木炭は林/池/採掘坑を参照する専門家たちが唯一生産できない資源な上、木炭を生産する建物も少ないため、どうしても木炭の生産は木炭に変換する専門家に頼りがちです。そういう点でも最も木炭を生産する【炭焼き】のダブルアクションが出来るかどうか、バッティングで被せられるかどうかも重要になってきます。

最重要資源の木をコストにする点が唯一最大のネック。

 

8) 【養魚家】

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コスト:木炭1,効果:食料2:池ごとに食料1

池を参照する2人の専門家のうちの1人。食料2を得るためだけなら【焼き畑農家】を優先する事が多いため、池戦術以外ではあまりお目にかからなく、それが故にバッティングしにくい。上のアクションがコストを差し引くと資源1しか増えないので、できれば池が4以上欲しい。【炭焼き】同様に、両方のストッパーが食料になっている時には重宝する、筈だけどほとんど(1度も?)使った事ないので何とも言えないw 

 

9) 【燃料収集人】

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コスト:水1,効果:手札1枚ごとに木炭1:木2

片方のアクションだけで資源が差し引き最大3増える唯一の職業 (例外は【事務所】を建てた時の【領主】) 。手札を参照するため、ほぼ1手目で出てきますし、出したい専門家。そのためケレン味を出されなければバッティングしにくいのが最大の特徴。もう1つのアクションも木2と優秀なので、1番手で炭が欲しい時にはファーストチョイス。逆に4番手だと旨味が少ない。【湯治場】の逆順変換なのも良い。ただし木炭3でも十分優秀な効果なので、相手が確実に【燃料収集人】を使ってくると読めたならバッティング目的で仕込むのも一考。

水を木炭に変換するので【灰汁製造所】と効果は被る。

 

10) 【粘土運び人】

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コスト:水1,効果:粘土2:粘土2

資源変換系の専門家の中では最も効率が悪く、バッティングしなくても資源が3、バッティングだと資源が1しか増えないのが最大のネック。そのため相手を潰す目的でなければバッティング要員にも出来ればしたくない専門家。特に採掘坑が2つ以上残っていれば、バッティングで粘土2増やすだけなら【坑内労働者】の方が水が減らない分お得で、同じくバッティングしなかった場合でも【坑内労働者】で粘土4増えるので、なるべくならそちらを使いたい。池戦術だとコストが安い分使い易くはなるが、出来るなら【粘土坑】【粘土の湖】【黄土の島】でカバーしたい。

とは言えバッティングされずに出せば重要資源である粘土が一気に4増えるのはかなり強い。というか粘土が一気に6も増えるといくら何でも強すぎるので、4しか増えないのも致し方ないところでしょうか。

 

11) 【水運び人】

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コスト:食料1,効果:水2木1:水2珪砂1

あまり重要ではない資源の水を増やしてもという場面が多く、比較的使われない専門家。とは言え3種類の資源を増やせる唯一の専門家で (例外は【事務所】を建てた時の【領主】) 、ガラスのストッパーを2~3個一気に外した時には輝きます。密かに地形が無くても珪砂が入るのもメリット。【無料食堂】と逆順変換なのもいいし、忘れがちだが木1増えるのも嬉しい。マイナーであるが故にバッティングしにくいのが最大のメリット?1R目にガラスを作るために珪砂を生産する3つの選択肢のうちの一つですが、後で水を使う予定が無いのなら【池造成者】【坑内労働者】を使った方が無難。

 

12) 【建築士

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コスト:食料1,効果:建設:建設

他の資源1が必要な専門家は資源変換系ですが、全専門家の中でも建設を2回できる唯一の存在。コストに基礎資源が必要な分、バッティングした場合には他の建設可能な専門家に劣るものの、バッティングを回避できた時の強さはある意味サイキョー。特に低コスト建物や資源が増える即時建物との相性が良い。ゲームに慣れてくればくるほど【建築士】のために食料をストックする重要性が増すと言っても過言ではないでしょう。とは言え、いつ使っても強いという訳でもなく、ダブルアクションするには空きスペースと十分な資源が必要で、できれば建設の選択肢を広げるためにも【領主】でキープした建物が欲しいところ。

 

13) コスト:資源1 専門家まとめ

建築士】は最も使い方が難しい職業で、ダブルアクションを潰すために温存するか、相手の資材が溜まる前に出すかなど、高度な駆け引きが必要となります。食料0の状態で選ぶのは賭けになるため、なるべくそういう状況に陥らないよう、相手がそういう状況になったのを見逃さない注意力も必要になってきます。

他の専門家は資源変換系で、【建築士】同様相手の資源を見ればある程度予測は立ちます。単純に資源を増やすなら加工建物や即時建物に軍配が上がることが多く、建設や加工の原材料に使う必要最小限以外ではなるべく使いたくないのも事実です。資源変換系の専門家を1Rに1~2人くらいに留め、その分を建設や地形拡張に回すことが出来れば初心者脱出と言ってもいいでしょう。使う際にはガラスやレンガを作ったことで専門家のコストを払えないという事態にならないよう、注意が必要です。

 

14) 【耕作者】

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効果:林/池/採掘坑を増やす:建設

建設ができる4人の専門家のうち、ノーコストで建設できる2人のうちの1人。 

森以外のどの地形戦術にもフィットする上、ノーコストで建設できるためバッティングの可能性は高いです。とは言え地形を増やすだけのアクションは基本的に弱く、建設する建物が無い場合やボーナス建物が絡んでなければ、バッティングした場合にはなるべく建設を選びたいところ。もちろん【耕作者】で増やした地形を即座に【森林管理人】でなどで有効活用できます。

 

15) 【森林管理人】

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効果:木+1,林を増やす:林ごとに木1/食料1

林戦術の中心となる専門家で、最も重要な資源である木を最も大量に生産できる可能性がある。どの地形を伸ばす専門家にも言えることですが、後半になればなるほど出す/出さないはバレバレになってくるので、片方のアクションだけで十分採算が取れるようにしたい。【森林管理人】で溢れるほど木を生産して、余剰分を加工の原料にするのが理想。食料目的で出すことが無いとは言いませんがあまりないでしょう。林を増やしてなくても木2/食料2で十分採算は取れるので、明らかに誰かが出すようであればバッティング目的にも。

 

16) 【池造成者】

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効果:池を増やす:池ごとに水1/珪砂1

池戦術の中心となる専門家で、地形を増やしながら資源も増やす3人の専門家のうち、唯一上のアクションで資源が増えない。だから【池造成者】が弱いのではなく、水1増えると強すぎるから調整された...のかなぁ?それ以上に水と珪砂という、ほとんど建設コストに直結しない資源しか増やせない点が最大のデメリット

その代わり池を参照する専門家が2人いる、池をコストに使う加工建物が他の地形に比べて1つ多い、池を参照する即時建物が3つある、水を参照する即時建物が2つある、珪砂を増やすことで最後の得点行動になるという風に、細かなメリットが多いのも確か。池戦術は木も粘土も足りない状況が多く、それをいかに加工建物や即時建物で賄うかを考える必要があり、それが故に上級者向け。池ボーナス建物がある場合を除いて、ゲーム慣れするまでは他の専門家に頼りたい。

 

17) 【坑内労働者】

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効果:粘土+1,採掘坑を増やす:採掘坑ごとに粘土1/珪砂1

採掘坑戦術の中心となる専門家で、木の次に重要な資源である粘土を大量に生産できる可能性がある。粘土が重要な割には粘土を増やす専門家が実質2人しかいない上に (【納入業者】【領主】含めると4人で、【領主】を粘土目的で入れることは稀) 、1R目だと【粘土運び人】と得られる資源量自体は同じなので、特に序盤はバッティングし易い。後半になれば加工建物や即時建物で賄える人も出てくるため、バッティングする確率は多少下がるかも。木とは違い粘土は加工の原料にほとんどならないので、余るようならレンガを作るが吉。

 

18) 【納入業者】

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効果:1種類の基礎資源2,他のプレイヤーに同資源:建設

【耕作者】同様、基本的には建設目的で仕込む専門家。基礎資源2のアクションも融通性があり意外と強い。とは言えダブルアクション出来る事を前提で仕込むと痛い目に遭う。地形戦術だと生産できない建設資源 (例えば採掘坑戦術だと木) を増やすのがメインだが、ガラスやレンガを作るために資源を増やすのももちろんアリ。ただし木炭や食料を増やすと他のプレイヤーにどちらのホイールを増やすかという選択肢を与えるため、 若干他のプレイヤーが有利になる。

忘れられがちだが、他のプレイヤーは【納入業者】からの資源受け取りを断ることも出来る (マニュアルp13参照) 。ホイールが勝手に回るのを防ぐテクニックなので、覚えておいて損はないです。一応出したプレイヤーも資源受け取りを断る、もしくは少ない資源だけ受け取ることが出来きますが (これはどの専門家を使った時も。マニュアルp12参照) 、そういう機会はほとんど無いでしょう。

 

19) 【領主】

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効果:3種類の建物パネル各1つをキープする:木1,粘土1

運頼みではあるものの、キープした建物を中心に戦略を固められるため相当強いです。個人的には1R目マスト。初プレイでこの専門家を1R目に出してくるプレイヤーは相当ゲーム慣れしてるとみていいでしょう。逆に4R目に出すと池戦術なのに【工場】引いてもといった場合が多く、本当にギャンブルになります。もちろんキープした建物をコストに使う【事務所】【地区事務所】【屋根板製造所】があれば話は別で、それぞれ 「好きな資源3 / 好きな地形1.5 / レンガ1.5(基礎資源換算4.5)」 と破格のアクションに早変わり。もう1つのアクションも木と粘土を同時に得られる唯一のもので、地味に有効。

 

20) ノーコスト 専門家まとめ 

ノーコストの専門家は残り資源を気にせず出せるため、どのプレイヤーからも出てくる可能性があります。とは言えどの地形を伸ばそうとしているのか、伸ばしているのかである程度判断は出来ますし、地形を伸ばしているなら【耕作者】、伸ばしてないなら【納入業者】、【領主】はほぼ1~2Rに限定されるといったように、ある程度読まれやすく、読みやすい専門家でしょう。